散発性急性A型肝炎の臨床像

血清中の抗A型肝炎ウイルス抗体価の測定および便中のA型肝炎ウイルスの検索より急性A型肝炎と診断しえた散発例についてその臨床像をまとめ,流行性のA型肝炎,散発性B型および非A非B型急性肝炎と比較検討をおこなった.A型肝炎と診断できた症例は15例(男9例,女6例)で,外国よりの感染を疑われた2例を除く症例は,いずれも1月より4月の冬から春に散発性に発症し,また,家族内二次感染が推測された3例を除いては,いずれもその感染経路は不明であった.前駆症状は,発熱等の多彩な症状を示す例が多く,病初期の末梢血液像では,異型リンパ球は6例に出現し,うち1例は15%と多かった.肝機能検査では,病初期よりTTT,I...

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Published in肝臓 Vol. 22; no. 4; pp. 487 - 493
Main Authors 坂本, 裕治, 長島, 秀夫, 西原, 隆, 吉田, 智郎, 山田, 剛太郎, 平川, 弘泰, 水野, 元夫, 小林, 敏成, 有正, 修道, 糸島, 達也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 1981
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.22.487

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Summary:血清中の抗A型肝炎ウイルス抗体価の測定および便中のA型肝炎ウイルスの検索より急性A型肝炎と診断しえた散発例についてその臨床像をまとめ,流行性のA型肝炎,散発性B型および非A非B型急性肝炎と比較検討をおこなった.A型肝炎と診断できた症例は15例(男9例,女6例)で,外国よりの感染を疑われた2例を除く症例は,いずれも1月より4月の冬から春に散発性に発症し,また,家族内二次感染が推測された3例を除いては,いずれもその感染経路は不明であった.前駆症状は,発熱等の多彩な症状を示す例が多く,病初期の末梢血液像では,異型リンパ球は6例に出現し,うち1例は15%と多かった.肝機能検査では,病初期よりTTT,IgMの高値を認める症例が多く,特にTTT 10u以上,IgM 500mg/dl以上の高値を示したのはA型肝炎だけであった.回復期の肝組織像は,B型急性肝炎の回復期の像と鑑別は困難であった.経過は良好で慢性化した例はなかった.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.22.487