慢性肝疾患における血清シアル酸および血清シアリルトランスフェラーゼ測定の意義

慢性肝疾患において,血清シアル酸量およびシアリルトランスフェラーゼ値を測定し,これらの臨床的意義について検討を行った.シアル酸量は正常人(7.2±0.8μg/mg protein)に比し,慢性肝炎(7.8±1.0μg/mg protein)では上昇を,肝硬変症(7.2±1.2μg/mg protein)では慢性肝炎に比し低下傾向を,肝癌(9.1±2.8μg/mg protein)では上昇を認めた.肝硬変症では非代償期の低下を認め,また肝癌では患者の状態が良い時期ではあきらかな上昇を認めた.以上より慢性肝疾患の経過中に,シアル酸量の上昇を検討することは肝癌合併の一つのマーカーになりうると考えられ...

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Published in肝臓 Vol. 24; no. 8; pp. 829 - 835
Main Authors 江崎, 隆朗, 沖田, 極, 荻野, 昌昭, 小田, 正隆, 坪田, 若子, 安藤, 啓次郎, 沼, 義則, 福本, 陽平, 児玉, 隆浩, 竹本, 忠良
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 1983
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Summary:慢性肝疾患において,血清シアル酸量およびシアリルトランスフェラーゼ値を測定し,これらの臨床的意義について検討を行った.シアル酸量は正常人(7.2±0.8μg/mg protein)に比し,慢性肝炎(7.8±1.0μg/mg protein)では上昇を,肝硬変症(7.2±1.2μg/mg protein)では慢性肝炎に比し低下傾向を,肝癌(9.1±2.8μg/mg protein)では上昇を認めた.肝硬変症では非代償期の低下を認め,また肝癌では患者の状態が良い時期ではあきらかな上昇を認めた.以上より慢性肝疾患の経過中に,シアル酸量の上昇を検討することは肝癌合併の一つのマーカーになりうると考えられる.シアリルトランスフェラーゼ値については,ほぼシアル酸と同様の傾向を認めた.肝癌特異r-GTPアイソザイムとの関係では,出現例,非出現例において両者ともに有意差を認めなかった.この点に関しては組織中での変化が問題であると考えられた.肝癌において血清中で両者が上昇を示したことは,腫瘍細胞中での糖代謝異常を反映していると考えられる.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.24.829