新技術の毒性学への応用 : 造血幹細胞動態解析法-BUUV法

造血毒性を正しく理解するためには造血幹細胞の動態を把握しなければならない。抹梢レベルの細胞の増減態様は決して幹細胞レベルの変化を反映していない事が少なくないからである。本稿で紹介するプロモデオキシユリジン-UVcytocide法(BUUV)法は, in vivoレベルで造血幹細胞動態を把握できる新しい方法であって, おそらく将来造血幹細胞動態解析に必須となり, 併せて毒性学においても大きな貢献を果すことが期待される方法である。組織切片上で標識率を計測できる腸管上皮や肝細胞と異なり, 造血幹細胞はコロニー形成能をもってはじめて認識できるものであり, このためDNA合成期(S期)にある幹細胞を除去...

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Published inThe Journal of Toxicological Sciences Vol. 23; no. 2; pp. App55 - App61
Main Authors 平林, 容子, 井上, 達
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本毒性学会 1998
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ISSN0388-1350
1880-3989
DOI10.2131/jts.23.2_App55

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Summary:造血毒性を正しく理解するためには造血幹細胞の動態を把握しなければならない。抹梢レベルの細胞の増減態様は決して幹細胞レベルの変化を反映していない事が少なくないからである。本稿で紹介するプロモデオキシユリジン-UVcytocide法(BUUV)法は, in vivoレベルで造血幹細胞動態を把握できる新しい方法であって, おそらく将来造血幹細胞動態解析に必須となり, 併せて毒性学においても大きな貢献を果すことが期待される方法である。組織切片上で標識率を計測できる腸管上皮や肝細胞と異なり, 造血幹細胞はコロニー形成能をもってはじめて認識できるものであり, このためDNA合成期(S期)にある幹細胞を除去することが, 細胞動態解析には必須となる。即ち本BUUV法では, 浸透圧ミニポンプを用いたプロモデオキシユリジン(BrdU)の持続標識と, このBrdUを取り込んだ細胞のみを特異的に死滅させる近紫外線(UVA)照射を組み合わせ, 非UVA照射群に対する照射群のコロニー数の減少率をもって, S期分画を計測する。ここで得ることが出来ると考えられるパラメーターは, (1)単位時間当たりのS期分画の大きさ, (2)世代倍加時間, (3)定常状態における細胞周期内分画の大きさ, ないしは細胞回転に入っていないdormantな分画の大きさ, など多岐にわたる。本稿では, このBUUV法を用いた正常造血幹・前駆細胞(脾コロニー形成ユニット:CFU-S, in vitroコロニー形成細胞:CFU-GM)の解析結果とともに, 幹細胞動態を修飾する様々な状態下における動態の変化の実例を紹介する。
ISSN:0388-1350
1880-3989
DOI:10.2131/jts.23.2_App55