岩手医科大学高度救命救急センターで治療した有機リン中毒62症例の検討

有機リン中毒の治療に用いるアトロピンには消化管運動抑制作用があり,消化管除染を妨げることがある.当科では2001年から腸洗浄による消化管除染を優先する治療法を行ってきた.今回当院で治療した有機リン中毒患者62例を対象とし,年齢や性別,原因物質,初期症状,治療方針,呼吸管理,症状・検査所見改善までの期間,入院期間などを診療録より後方視的に比較・検討した.さらに重症例として,血清コリンエステラーゼ(以下ChE)の最低値が3 U/L以下の症例(24例)を対象とし,治療法別に回復期間の比較を行った.結果として重症例では,血清ChE 52 U/L以上(症状改善の目安)への回復期間は,胃洗浄,ヨウ化プラリ...

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Published in岩手医学雑誌 Vol. 74; no. 4; pp. 131 - 141
Main Authors 横藤, 壽, 藤野, 靖久, 藤田, 友嗣, 高橋, 学, 小野寺, 誠, 井上, 義博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 岩手医学会 01.10.2022
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Summary:有機リン中毒の治療に用いるアトロピンには消化管運動抑制作用があり,消化管除染を妨げることがある.当科では2001年から腸洗浄による消化管除染を優先する治療法を行ってきた.今回当院で治療した有機リン中毒患者62例を対象とし,年齢や性別,原因物質,初期症状,治療方針,呼吸管理,症状・検査所見改善までの期間,入院期間などを診療録より後方視的に比較・検討した.さらに重症例として,血清コリンエステラーゼ(以下ChE)の最低値が3 U/L以下の症例(24例)を対象とし,治療法別に回復期間の比較を行った.結果として重症例では,血清ChE 52 U/L以上(症状改善の目安)への回復期間は,胃洗浄,ヨウ化プラリドキシム,活性炭の各群で有意差がなかったが,腸洗浄治療群では有意に短縮した.気管挿管期間,入院期間に関しては全治療法で統計学的有意差は認めなかった.今回の検討で,初期治療で腸洗浄を施行した群では有症状期間が短縮する可能性が示唆された.
ISSN:0021-3284
2434-0855
DOI:10.24750/iwateishi.74.4_131