脊髄髄内腫瘍の外科治療の最新動向:日本脊髄外科学会による1,033例の多施設共同研究 日本語翻訳版
はじめに:本研究では,脊髄髄内腫瘍の手術リスクと長期予後を評価することを目的とし,日本脳脊髄学会認定の多施設による後方視的観察研究を実施した.方法:2009年から2020年までに治療を受けた脊髄髄内腫瘍患者1,033例のデータを58施設から収集し,患者の特徴,臨床像,加齢特性,治療,および転帰を分析した.神経機能評価の分類にはマコーミックスケールを,生存率の解析にはカプランマイヤー曲線を使用し,多変量ロジスティック回帰分析を実施した.結果:患者の平均年齢は48.4歳,平均追跡期間は46.1ヶ月であった.1,033例には361例の上衣腫,196例の血管芽細胞腫,168例の星細胞腫,160例の海綿...
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Published in | Journal of Spine Research Vol. 16; no. 2; pp. 78 - 86 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
20.02.2025
日本脊椎脊髄病学会 |
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Summary: | はじめに:本研究では,脊髄髄内腫瘍の手術リスクと長期予後を評価することを目的とし,日本脳脊髄学会認定の多施設による後方視的観察研究を実施した.方法:2009年から2020年までに治療を受けた脊髄髄内腫瘍患者1,033例のデータを58施設から収集し,患者の特徴,臨床像,加齢特性,治療,および転帰を分析した.神経機能評価の分類にはマコーミックスケールを,生存率の解析にはカプランマイヤー曲線を使用し,多変量ロジスティック回帰分析を実施した.結果:患者の平均年齢は48.4歳,平均追跡期間は46.1ヶ月であった.1,033例には361例の上衣腫,196例の血管芽細胞腫,168例の星細胞腫,160例の海綿状血管腫が含まれた.腫瘍の肉眼的全摘出が達成されたのは672例(65.1%)であった.神経機能評価において,234例(22.7%)が退院時に術前より一段階以上の悪化を呈した.患者の神経学的機能はその後改善し,術後6ヶ月の時点では,術前に比べ160例(17.6%)が悪化した.251例(27.5%)が改善を認めた.術前の神経機能,腫瘍摘出の度合い,病理組織型が,死亡率および機能的転帰と有意に関連した.結論:本研究において,脊髄髄内腫瘍摘出手術術前の神経学的機能障害が軽度であるほど,術後の神経機能的転帰が良好であることが示された.さらに腫瘍摘出度,術後経過および生命予後は腫瘍組織型に関連している現状が明らかとなった. |
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ISSN: | 1884-7137 2435-1563 |
DOI: | 10.34371/jspineres.2024-0001 |