Abdominal compartment syndromeを疑い二期的手術により救命した大腿ヘルニア嵌頓の1例
症例は83歳の女性で,大腿ヘルニア嵌頓のため緊急手術となった。腸管壊死は認めなかったが,腸管には著明な浮腫があり,裂創が多発し,修復困難で切除吻合した。術中,上室性不整脈から血圧が30mmHgまで低下し30秒間の胸骨圧迫を要した。不整脈に対してはlandiololを使用しつつ,noradrenalineとvassopressinを投与し血圧は上昇したが,腸管を腹腔内に戻し閉腹を試みると,血圧が70/45mmHgまで低下した。Abdominal compartment syndromeを疑い,腸管に裂創を生じやすいことを考え一期的閉腹を断念し滅菌閉鎖式導尿バックを用い腸管を覆い,さらにドレープで...
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Published in | 日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 29; no. 4; pp. 661 - 663 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本腹部救急医学会
2009
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Subjects | |
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Summary: | 症例は83歳の女性で,大腿ヘルニア嵌頓のため緊急手術となった。腸管壊死は認めなかったが,腸管には著明な浮腫があり,裂創が多発し,修復困難で切除吻合した。術中,上室性不整脈から血圧が30mmHgまで低下し30秒間の胸骨圧迫を要した。不整脈に対してはlandiololを使用しつつ,noradrenalineとvassopressinを投与し血圧は上昇したが,腸管を腹腔内に戻し閉腹を試みると,血圧が70/45mmHgまで低下した。Abdominal compartment syndromeを疑い,腸管に裂創を生じやすいことを考え一期的閉腹を断念し滅菌閉鎖式導尿バックを用い腸管を覆い,さらにドレープで密閉し,ICUへ入室した。術後6日目に二期的に閉腹し救命することができた。Abdominal compartment syndromeは念頭に置くべき病態で,閉腹を断念し減圧後再手術を期すことは考慮すべき治療戦略と思われた。 |
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ISSN: | 1340-2242 1882-4781 |
DOI: | 10.11231/jaem.29.661 |