保存的治療にて軽快した門脈ガス血症の2症例

保存的治療にて軽快した,門脈ガス血症の2例を経験したので報告する。症例1は36歳男性で,高浸透圧性ケトン性昏睡の診断にて当院紹介となった。腹部には圧痛を認めなかったが,腹部CT検査にて門脈ガス像,腸管気腫および腹水を認めた。超音波下の腹水穿刺の結果,腸管壊死の可能性は低いと考え,血糖のコントロールを中心に経過観察となった。門脈ガスの原因は,高度の脱水による非閉塞性腸管膜虚血症の可能性が高いと思われた。症例2は85歳女性で,腹痛や嘔吐,下血にて当院紹介来院となった。下腹部に圧痛を軽度認めた。腹部CT検査にて門脈ガス像と直腸に内部壊死を伴う腫瘍像を認め,下部消化管内視鏡にて直腸に腫瘍を認めた。門脈...

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Published inNihon Fukubu Kyukyu Igakkai Zasshi (Journal of Abdominal Emergency Medicine) Vol. 30; no. 4; pp. 607 - 611
Main Authors 森下, 幸治, 大友, 康裕, 村田, 希吉, 庄古, 知久, 加地, 正人, 相星, 淳一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 2010
Japanese Society for Abdominal Emergency Medicine
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Summary:保存的治療にて軽快した,門脈ガス血症の2例を経験したので報告する。症例1は36歳男性で,高浸透圧性ケトン性昏睡の診断にて当院紹介となった。腹部には圧痛を認めなかったが,腹部CT検査にて門脈ガス像,腸管気腫および腹水を認めた。超音波下の腹水穿刺の結果,腸管壊死の可能性は低いと考え,血糖のコントロールを中心に経過観察となった。門脈ガスの原因は,高度の脱水による非閉塞性腸管膜虚血症の可能性が高いと思われた。症例2は85歳女性で,腹痛や嘔吐,下血にて当院紹介来院となった。下腹部に圧痛を軽度認めた。腹部CT検査にて門脈ガス像と直腸に内部壊死を伴う腫瘍像を認め,下部消化管内視鏡にて直腸に腫瘍を認めた。門脈ガスの原因として腫瘍壊死が考えられた。門脈ガス血症はさまざまな疾患に併存する。今回のように保存的に軽快する症例もあるが,鑑別診断として致命的な疾患をつねに念頭におくことが重要である。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.30.607