腹部刺創による尿管断裂の1例

症例は58歳の男性。自殺企図により包丁を臍左側に1回刺し,抜去した状態で受傷約2時間後に救急搬送された。小腸脱出と出血性ショックのため緊急開腹,止血と小腸部分切除術を施行した。術後イレウスとなり,CTで腹腔内から左腸腰筋へ連続する低吸収域と左水腎症を認めたため,再手術を施行。後腹膜に左腸腰筋と交通する径2cmの損傷を認めた。腹腔内と後腹膜腔内に汚染した腹水を認め,洗浄・ドレナージを行った。術後,後腹膜ドレーンの排液は減少せずに尿量が減少,排液の性状が尿と類似していることから尿管損傷を疑った。逆行性腎盂尿管造影で左尿管断裂と診断,再手術16日後左腎瘻造設,46日後二期的に尿管再建術を施行,56日...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 30; no. 7; pp. 957 - 960
Main Authors 本間, 信之, 工藤, 大介, 湯澤, 寛尚, 佐藤, 武揚, 山内, 聡, 篠澤, 洋太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 2010
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Summary:症例は58歳の男性。自殺企図により包丁を臍左側に1回刺し,抜去した状態で受傷約2時間後に救急搬送された。小腸脱出と出血性ショックのため緊急開腹,止血と小腸部分切除術を施行した。術後イレウスとなり,CTで腹腔内から左腸腰筋へ連続する低吸収域と左水腎症を認めたため,再手術を施行。後腹膜に左腸腰筋と交通する径2cmの損傷を認めた。腹腔内と後腹膜腔内に汚染した腹水を認め,洗浄・ドレナージを行った。術後,後腹膜ドレーンの排液は減少せずに尿量が減少,排液の性状が尿と類似していることから尿管損傷を疑った。逆行性腎盂尿管造影で左尿管断裂と診断,再手術16日後左腎瘻造設,46日後二期的に尿管再建術を施行,56日後独歩退院した。腹部刺創による尿管損傷の合併はまれであるが,損傷部位としてつねに念頭に置く必要がある。また後腹膜損傷部近傍のドレーン排液の性状は尿管損傷の診断に有用であった。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.30.957