先天性心外膜欠損症を合併した妊婦に対する緊急帝王切開術の麻酔経験

症例は20代の女性。166 cm,64 kg。先天性心外膜欠損症合併妊娠に対して入院管理していたが,経過中に胸痛が出現したため妊娠34週4日で緊急帝王切開術を行った。事前のMRIで左室心尖部の心外膜に約3 cmの欠損を認め,体位による心電図変化がみられた。術前には左側臥位で胸痛が出現し,仰臥位では無症状であった。麻酔方法は脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔を選択した。右側臥位で穿刺し,仰臥位に変換後も手術台の左横転は行わなかった。術中に胸痛や動悸の訴えはなく循環動態は安定していた。本症例は左側臥位になることで心外膜欠損部に心尖部が逸脱し,胸部症状を呈したと推察される。症状増悪の要因として,妊娠経過に伴...

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Published inCardiovascular Anesthesia Vol. 28; no. 1; pp. 147 - 152
Main Authors 嵯峨, 卓, 小玉, 早穂子, 石野, 寛和, 堀越, 雄太, 合谷木, 徹, 新山, 幸俊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本心臓血管麻酔学会 01.09.2024
日本心臓血管麻酔学会
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Summary:症例は20代の女性。166 cm,64 kg。先天性心外膜欠損症合併妊娠に対して入院管理していたが,経過中に胸痛が出現したため妊娠34週4日で緊急帝王切開術を行った。事前のMRIで左室心尖部の心外膜に約3 cmの欠損を認め,体位による心電図変化がみられた。術前には左側臥位で胸痛が出現し,仰臥位では無症状であった。麻酔方法は脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔を選択した。右側臥位で穿刺し,仰臥位に変換後も手術台の左横転は行わなかった。術中に胸痛や動悸の訴えはなく循環動態は安定していた。本症例は左側臥位になることで心外膜欠損部に心尖部が逸脱し,胸部症状を呈したと推察される。症状増悪の要因として,妊娠経過に伴う子宮増大による物理的要因や循環血漿量増加による前負荷の増加が考えられた。陽圧換気が母児に与える影響が不明だったため全身麻酔は避け,当院の帝王切開術の周術期管理において最も慣れている脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔を選択した。心外膜欠損症合併妊娠に対する帝王切開術において麻酔方法の選択に一定の見解はないが,本症例は脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔で安定した麻酔管理が可能であった。
ISSN:1342-9132
1884-7439
DOI:10.11478/jscva.2023-3-013