下血により発見され診断に苦慮した小腸GISTの1例

症例は43歳,男性。嘔吐,下血を主訴として当院の救急外来を受診した。軽度の貧血を認め,緊急上部消化管内視鏡検査を行ったが出血源は認めず,精査加療の目的で入院となった。腹部造影CT上,左胃大網動脈と上腸間膜動脈の分枝を栄養血管とし,造影効果を有する約8cm大の腫瘤を認めた。下部消化管内視鏡検査を施行したが明らかな出血源や腫瘤性病変を認めなかった。入院後は下血を認めなかったため,経口摂取を開始したところ,再度,下血を認めた。出血を伴う大網由来の腹部腫瘤の診断で開腹手術を行った。手術ではTreitz靭帯より約2m肛門側の空腸に10cm大の腫瘤を認め,腫瘤に大網が付着し,同部に栄養血管を認めた。小腸腫...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 29; no. 5; pp. 757 - 761
Main Authors 上月, 章史, 篠崎, 浩治, 加瀬, 建一, 小林, 健二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 2009
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Summary:症例は43歳,男性。嘔吐,下血を主訴として当院の救急外来を受診した。軽度の貧血を認め,緊急上部消化管内視鏡検査を行ったが出血源は認めず,精査加療の目的で入院となった。腹部造影CT上,左胃大網動脈と上腸間膜動脈の分枝を栄養血管とし,造影効果を有する約8cm大の腫瘤を認めた。下部消化管内視鏡検査を施行したが明らかな出血源や腫瘤性病変を認めなかった。入院後は下血を認めなかったため,経口摂取を開始したところ,再度,下血を認めた。出血を伴う大網由来の腹部腫瘤の診断で開腹手術を行った。手術ではTreitz靭帯より約2m肛門側の空腸に10cm大の腫瘤を認め,腫瘤に大網が付着し,同部に栄養血管を認めた。小腸腫瘍の診断で小腸部分切除術を施行した。腫瘍は小腸粘膜面に潰瘍を形成しており,出血源と考えられた。病理診断ではKIT・CD34ともに陽性の小腸GISTの診断であった。左胃大網動脈からの血管は腫瘍への寄生動脈と考えられた。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.29.757