左鼠径ヘルニア嵌頓を伴った大網出血の1例

症例は22歳の男性。16歳時より左鼠径ヘルニアを自覚していた。左鼠径部痛を主訴に近医を受診し,その後疼痛が増強したため当院に救急搬送となった。来院時,腹部全体に腹膜刺激症状を認め,腹部CT検査にて左傍結腸溝に出血と考えられる高濃度腹水を認めた。また入院後貧血が進行したため,腹腔内出血と診断し手術となった。腹腔鏡を挿入したところ,左上腹部を中心に,左横隔膜下や左傍結腸溝,Douglas窩に暗赤色の血性腹水を認めた。また大網が脾曲部近傍の側腹壁に高度に癒着し,左内鼠径輪へも大網が嵌頓していた。出血点の同定が困難であったため上腹部の小開腹創から腹腔内を検索したところ,上述癒着部の大網の血管が破綻して...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 30; no. 6; pp. 839 - 842
Main Authors 富原, 英生, 陵城, 成浩, 植田, 真三久, 村田, 晃一, 石田, 諒
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 2010
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Summary:症例は22歳の男性。16歳時より左鼠径ヘルニアを自覚していた。左鼠径部痛を主訴に近医を受診し,その後疼痛が増強したため当院に救急搬送となった。来院時,腹部全体に腹膜刺激症状を認め,腹部CT検査にて左傍結腸溝に出血と考えられる高濃度腹水を認めた。また入院後貧血が進行したため,腹腔内出血と診断し手術となった。腹腔鏡を挿入したところ,左上腹部を中心に,左横隔膜下や左傍結腸溝,Douglas窩に暗赤色の血性腹水を認めた。また大網が脾曲部近傍の側腹壁に高度に癒着し,左内鼠径輪へも大網が嵌頓していた。出血点の同定が困難であったため上腹部の小開腹創から腹腔内を検索したところ,上述癒着部の大網の血管が破綻しており同部から出血を認めた。大網部分切除術と鼠径ヘルニア根治術を行い,術後6日目に退院となった。鼠径ヘルニアの嵌頓が原因と考えられる,大網出血の1例を経験した。大網出血の報告はまれであり,文献的考察を加え報告する。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.30.839