上大静脈に挿入した脱血管内の白色血栓が原因で脱血不良を起こした一例
純型肺動脈閉鎖の1歳1か月の男児に,両方向性グレン手術を行なった。上大静脈へ脱血管を挿入し,脱血管周囲の上大静脈を絞扼した4分後には中心静脈圧が上昇し,患児の顔面うっ血を認めた。上大静脈脱血管の位置調整を行ったが改善せず,脱血管を抜去したところ管内に血栓様物質を確認した。新しく同型の脱血管を挿入し,その後は脱血不良の問題なく手術は終了した。回収した血栓様物質の病理組織学的所見は白色血栓であった。 本症例では,脱血管内の白色血栓による閉塞が脱血不良の原因であった。脱血管内に血栓が形成された原因として,患者要因,抗凝固剤の不足・効果の低下,脱血管自体の問題が挙げられるが,人工心肺開始後のACTは1...
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Published in | Cardiovascular Anesthesia Vol. 28; no. 1; pp. 153 - 157 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本心臓血管麻酔学会
01.09.2024
日本心臓血管麻酔学会 |
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Summary: | 純型肺動脈閉鎖の1歳1か月の男児に,両方向性グレン手術を行なった。上大静脈へ脱血管を挿入し,脱血管周囲の上大静脈を絞扼した4分後には中心静脈圧が上昇し,患児の顔面うっ血を認めた。上大静脈脱血管の位置調整を行ったが改善せず,脱血管を抜去したところ管内に血栓様物質を確認した。新しく同型の脱血管を挿入し,その後は脱血不良の問題なく手術は終了した。回収した血栓様物質の病理組織学的所見は白色血栓であった。 本症例では,脱血管内の白色血栓による閉塞が脱血不良の原因であった。脱血管内に血栓が形成された原因として,患者要因,抗凝固剤の不足・効果の低下,脱血管自体の問題が挙げられるが,人工心肺開始後のACTは1500秒以上であり,脱血管以外の人工心肺の回路には血栓形成は認められず,患者要因の凝固能の問題や,抗凝固剤の不足・効果の低下は考えにくい。閉塞した脱血管についてメーカーに精査依頼をしたが,原因は特定できなかった。 脳障害につながる上大静脈脱血不良は,人工心肺中の灌流圧や灌流量,混合静脈血酸素飽和度の異常がなくても発症しうるため,中心静脈圧や脳内局所組織酸素飽和度モニタリングに加え,頭頸部のうっ血や結膜浮腫の観察が重要である。 |
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ISSN: | 1342-9132 1884-7439 |
DOI: | 10.11478/jscva.2023-2-008 |