機関投資家の制度的背景と企業のESG活動:クロスカントリー分析

本稿では,機関投資家の受託者責任の認識が法体系で異なることから,環境・社会側面を配慮するESG投資を通した企業への効果が,機関投資家所在国の法体系で水準に差が生じるかを検証した.具体的には,アメリカ・日本・フランス・ドイツ・イギリスの5か国の主要企業を対象に,各企業に投資する機関投資家の所在国85ヵ国の法体系に基づき,機関投資家の持株比率を集計した.そして,外国機関投資家,国内機関投資家それぞれから投資先企業のESG活動への働きかけを検証した.本稿の結果は,機関投資家の所在国85か国の法の起源が各国に個別の他の要因と相関している可能性を否定できない点で留意点はあるが,シビルロー体系国の機関投資...

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Published in現代ファイナンス Vol. 46; pp. 1 - 21
Main Authors 池田, 直史, 井上, 光太郎, 藍口, 梨里花
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ファイナンス学会 MPTフォーラム 31.10.2023
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ISSN2433-4464
DOI10.24487/gendaifinance.460002

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Summary:本稿では,機関投資家の受託者責任の認識が法体系で異なることから,環境・社会側面を配慮するESG投資を通した企業への効果が,機関投資家所在国の法体系で水準に差が生じるかを検証した.具体的には,アメリカ・日本・フランス・ドイツ・イギリスの5か国の主要企業を対象に,各企業に投資する機関投資家の所在国85ヵ国の法体系に基づき,機関投資家の持株比率を集計した.そして,外国機関投資家,国内機関投資家それぞれから投資先企業のESG活動への働きかけを検証した.本稿の結果は,機関投資家の所在国85か国の法の起源が各国に個別の他の要因と相関している可能性を否定できない点で留意点はあるが,シビルロー体系国の機関投資家は企業の環境・社会配慮活動に対し働きかけ,コモンロー体系国の機関投資家はそうした働きかけが確認できないことを示す.これは機関投資家がそれぞれの固有の制度的背景に基づき,企業のESG活動に影響を持つことを示唆する.
ISSN:2433-4464
DOI:10.24487/gendaifinance.460002