腹痛を契機に発見された後腹膜漿液性嚢胞の1例

腹痛を契機に発見された後腹膜漿液性嚢胞の1例を経験した。症例は69歳,女性。神経症等で近医通院中であったが,臍左方の腹痛が数回みられ精査となった。腹部に腫瘤は触知しなかった。血液検査では貧血とK値が低下していた他は腫瘍マーカーも含めて異常なかった。腹部CT検査では左腎下極より腸腰筋の外側に沿って骨盤腔内に連続する径6cm大の嚢胞性腫瘤を認めた。注腸検査では特記すべき所見はなかった。DIPでは腫瘤による圧排所見もなく,尿路系に異常所見はなかった。以上の所見から後腹膜嚢胞と診断し,持続する腹痛も併存したため開腹による後腹膜嚢胞摘出術を施行した。嚢胞と周囲臓器との境界は明瞭で,癒着や交通はみられず,...

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Published inNihon Fukubu Kyukyu Igakkai Zasshi (Journal of Abdominal Emergency Medicine) Vol. 29; no. 1; pp. 79 - 81
Main Authors 石川, 正志, 一森, 敏弘, 石倉, 久嗣, 木村, 秀, 阪田, 章聖
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 2009
Japanese Society for Abdominal Emergency Medicine
Subjects
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.29.79

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Summary:腹痛を契機に発見された後腹膜漿液性嚢胞の1例を経験した。症例は69歳,女性。神経症等で近医通院中であったが,臍左方の腹痛が数回みられ精査となった。腹部に腫瘤は触知しなかった。血液検査では貧血とK値が低下していた他は腫瘍マーカーも含めて異常なかった。腹部CT検査では左腎下極より腸腰筋の外側に沿って骨盤腔内に連続する径6cm大の嚢胞性腫瘤を認めた。注腸検査では特記すべき所見はなかった。DIPでは腫瘤による圧排所見もなく,尿路系に異常所見はなかった。以上の所見から後腹膜嚢胞と診断し,持続する腹痛も併存したため開腹による後腹膜嚢胞摘出術を施行した。嚢胞と周囲臓器との境界は明瞭で,癒着や交通はみられず,容易に摘出できた。病理組織所見では嚢胞壁は異型のない1層の円柱上皮と結合織からなっており,solitary cystと診断された。術後左側腹部痛は消失した。後腹膜に発生する漿液性嚢胞の報告は極めてまれであり,文献的考察を加え報告する。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.29.79