アルツハイマー病治療に用いられるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の神経保護作用機序に関する研究

「はじめに」アルツハイマー病は初老期以降に発症する認知症の1つであり, 中核症状として認知, 学習機能の低下がみられ, 進行性の経過をたどる. 症例が報告されてから約100年経た現在においても, 発症の機序や根本的な治療方法は解明されていない. 高齢化社会を迎えた日本社会にとって, アルツハイマー病の発症, 進行機序の解明, 治療方法の確立は社会的に重要な課題であるといえる. アルツハイマー病の代表的な病理学的特徴としては, アミロイドβタンパク(Aβ)を主成分とする老人斑の形成と神経原繊維変化及び神経細胞の脱落が挙げられ, アルツハイマー病は神経変性疾患としての側面を持っている. 1, 2)...

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Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 126; no. 8; pp. 607 - 616
Main Author 高鳥, 悠記
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 2006
日本薬学会
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ISSN0031-6903
1347-5231
DOI10.1248/yakushi.126.607

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Summary:「はじめに」アルツハイマー病は初老期以降に発症する認知症の1つであり, 中核症状として認知, 学習機能の低下がみられ, 進行性の経過をたどる. 症例が報告されてから約100年経た現在においても, 発症の機序や根本的な治療方法は解明されていない. 高齢化社会を迎えた日本社会にとって, アルツハイマー病の発症, 進行機序の解明, 治療方法の確立は社会的に重要な課題であるといえる. アルツハイマー病の代表的な病理学的特徴としては, アミロイドβタンパク(Aβ)を主成分とする老人斑の形成と神経原繊維変化及び神経細胞の脱落が挙げられ, アルツハイマー病は神経変性疾患としての側面を持っている. 1, 2)また, アルツハイマー病患者の死後脳では, コリン作動性神経の起始核の萎縮, マイネルト核から大脳皮質に投射するアセチルコリン(ACh)作動性神経細胞の減少, 皮質におけるアセチルコリントランスフェラーゼ活性の低下, ACh, ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)発現量の低下など, コリン作動性神経に関連する障害が明らかにされている. 3, 4)
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.126.607