アルコール性慢性膵炎を背景とする脾破裂の1例

症例は多量の飲酒歴のある40歳男性。3年前から左背部の痛みを自覚していた。左背部の激痛があり救急外来を受診した。造影CTで,脾臓周囲に造影剤の血管外漏出を伴う脾破裂,膵囊胞を認め多量の血性腹水もみられた。脾破裂の診断でただちに血管造影を行ったが,明らかな出血血管を認めず経カテーテル的動脈塞栓術は行わなかった。輸血,補液でバイタルサインは安定したが貧血の改善がなく翌日開腹手術を施行した。術中所見では脾臓外側の被膜下に大きな血腫を認め被膜が断裂しており脾摘と腹腔内洗浄を行った。術後アルコール離脱による精神症状を認めた。また術後膵尾部近傍に膿瘍形成を認めたが,抗菌薬投与で改善し術後第18病日に退院し...

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Published inNihon Fukubu Kyukyu Igakkai Zasshi (Journal of Abdominal Emergency Medicine) Vol. 34; no. 5; pp. 1061 - 1064
Main Authors 高清水, 清治, 長谷川, 傑, 佐藤, 勤, 藤田, 正太
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 2014
Japanese Society for Abdominal Emergency Medicine
Subjects
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.34.1061

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Summary:症例は多量の飲酒歴のある40歳男性。3年前から左背部の痛みを自覚していた。左背部の激痛があり救急外来を受診した。造影CTで,脾臓周囲に造影剤の血管外漏出を伴う脾破裂,膵囊胞を認め多量の血性腹水もみられた。脾破裂の診断でただちに血管造影を行ったが,明らかな出血血管を認めず経カテーテル的動脈塞栓術は行わなかった。輸血,補液でバイタルサインは安定したが貧血の改善がなく翌日開腹手術を施行した。術中所見では脾臓外側の被膜下に大きな血腫を認め被膜が断裂しており脾摘と腹腔内洗浄を行った。術後アルコール離脱による精神症状を認めた。また術後膵尾部近傍に膿瘍形成を認めたが,抗菌薬投与で改善し術後第18病日に退院した。脾破裂はまれな疾患であるが,アルコール性慢性膵炎を背景に発症した症例が報告されている。本症例も多量の飲酒歴と背部痛の自覚,膵囊胞の存在などからアルコール性慢性膵炎の脾破裂への関与が考えられた。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.34.1061