病的肥満患者に発症した術前心停止を伴う急性大動脈解離の手術経験

病的肥満患者において体外循環の送血路確保は時に難渋する.患者は体重160 kgの53歳男性.Stanford A型急性大動脈解離,心タンポナーデの診断で緊急手術を施行した.気管挿管後に心停止となり,タンポナーデ解除後に心拍再開が得られたが,上行大動脈破裂による噴出性の出血を認めた.出血をコントロールしつつ経心尖部送血で体外循環を開始し,低体温循環停止下にHemi-arch人工血管置換術を施行した.術後の酸素化は極めて不良で,術後11日に経皮的気管切開キットを使用し気管切開を行った.一時的な透析を要したが透析は術後26日で離脱した.術後33日で人工呼吸器を離脱し,術後54日にリハビリ目的に転院し...

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Published inJapanese Journal of Vascular Surgery Vol. 27; no. 5; pp. 355 - 358
Main Authors 小川, 辰士, 水野, 明宏, 在國寺, 健太, 齊藤, 慈円, 須田, 久雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本血管外科学会 20.09.2018
日本血管外科学会
JAPANESE SOCIETY FOR VASCULAR SURGERY
Subjects
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ISSN0918-6778
1881-767X
DOI10.11401/jsvs.18-00075

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Summary:病的肥満患者において体外循環の送血路確保は時に難渋する.患者は体重160 kgの53歳男性.Stanford A型急性大動脈解離,心タンポナーデの診断で緊急手術を施行した.気管挿管後に心停止となり,タンポナーデ解除後に心拍再開が得られたが,上行大動脈破裂による噴出性の出血を認めた.出血をコントロールしつつ経心尖部送血で体外循環を開始し,低体温循環停止下にHemi-arch人工血管置換術を施行した.術後の酸素化は極めて不良で,術後11日に経皮的気管切開キットを使用し気管切開を行った.一時的な透析を要したが透析は術後26日で離脱した.術後33日で人工呼吸器を離脱し,術後54日にリハビリ目的に転院した.現在は自宅退院し職場復帰を果たした.経心尖部送血は体格に左右されない迅速な送血路として有用であった.早期の気管切開は縦隔炎のリスクとなるが,気管切開により早期に呼吸器の離脱と離床が可能となった.
ISSN:0918-6778
1881-767X
DOI:10.11401/jsvs.18-00075