ナノマテリアルの次世代健康影響—妊娠期曝露の子に及ぼす影響

「1. はじめに」都市圏では, 浮遊粒子状物質の半分近くがディーゼル車由来といわれている. われわれは, そのディーゼル車が排出するガスを妊娠中の母マウスに吸わせ, 生まれてきた仔の生殖系, 脳神経系などへの影響を検討してきた. その結果, 排ガス由来と思われるナノサイズ(100nm以下)の黒い粒子状物質が, 仔の脳血管周囲顆粒細胞内の消化顆粒に蓄積することや, 脳内に様々な異変が認められることを見い出した. 1) 一方, ナノテクノロジーは産業の基盤技術として期待が寄せられており, フラーレン, カーボンナノチューブなど様々なナノ材料の開発と製造, その応用が進められている. ナノテクノロジ...

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Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 131; no. 2; pp. 229 - 236
Main Authors 田井中, 均, 武田, 健, 鈴木, 健一郎, 押尾, 茂, 菅又, 昌雄, 新海, 雄介, 柳田, 信也, 井原, 智美, 横田, 理, 梅澤, 雅和
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 01.02.2011
日本薬学会
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ISSN0031-6903
1347-5231
DOI10.1248/yakushi.131.229

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Summary:「1. はじめに」都市圏では, 浮遊粒子状物質の半分近くがディーゼル車由来といわれている. われわれは, そのディーゼル車が排出するガスを妊娠中の母マウスに吸わせ, 生まれてきた仔の生殖系, 脳神経系などへの影響を検討してきた. その結果, 排ガス由来と思われるナノサイズ(100nm以下)の黒い粒子状物質が, 仔の脳血管周囲顆粒細胞内の消化顆粒に蓄積することや, 脳内に様々な異変が認められることを見い出した. 1) 一方, ナノテクノロジーは産業の基盤技術として期待が寄せられており, フラーレン, カーボンナノチューブなど様々なナノ材料の開発と製造, その応用が進められている. ナノテクノロジーは極めて広い裾野を持った技術であり, それがもたらすメリットは計りしれない. それだけに不確実な要素, 特に健康に及ぼす影響という不安を取り除いておくことが重要な課題と思われる. われわれは, 排ガス微粒子以外に炭素系ナノマテリアル(カーボンブラック, カーボンナノチューブ, フラーレン)や金属系ナノ粒子(酸化チタン, 酸化亜鉛)など意図的, 工業的に生産される様々なタイプのナノマテリアルの健康への影響についても研究してきた.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.131.229