ヨード造影剤による腎障害発現機序の解明とベラプロストの保護作用
「1. はじめに」「1-1. 造影剤腎症について」ヨード造影剤(以下, 造影剤)はX線の吸収を高める優れた陽性造影剤であり, X線造影技術の発展とともに近年, その使用は増加の一途を辿っている. 1950年代から60年代にかけては, イオン性の造影剤が数多く開発されたが, 蕁麻疹や紅斑などの過敏症状が高頻度で発現し, さらに, ときとして呼吸困難や肺浮腫, 血圧低下, 意識消失, 心停止といった重篤なショック症状を引き起こすことが大きな問題となった. その後1980年代になり, 非イオン性の造影剤が次々と開発され, アナフィラキシー様の副作用発現は大幅に減少した. 一方, これらの過敏反応に加...
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Published in | YAKUGAKU ZASSHI Vol. 128; no. 7; pp. 1023 - 1029 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本薬学会
01.07.2008
日本薬学会 |
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ISSN | 0031-6903 1347-5231 |
DOI | 10.1248/yakushi.128.1023 |
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Summary: | 「1. はじめに」「1-1. 造影剤腎症について」ヨード造影剤(以下, 造影剤)はX線の吸収を高める優れた陽性造影剤であり, X線造影技術の発展とともに近年, その使用は増加の一途を辿っている. 1950年代から60年代にかけては, イオン性の造影剤が数多く開発されたが, 蕁麻疹や紅斑などの過敏症状が高頻度で発現し, さらに, ときとして呼吸困難や肺浮腫, 血圧低下, 意識消失, 心停止といった重篤なショック症状を引き起こすことが大きな問題となった. その後1980年代になり, 非イオン性の造影剤が次々と開発され, アナフィラキシー様の副作用発現は大幅に減少した. 一方, これらの過敏反応に加えて造影剤投与患者で特に注意しなければならないのは急性腎不全の発症である. 造影剤の投与によって起こる腎障害は造影剤腎症と呼ばれ, 特に, 高齢者や腎機能が低下している患者, 又は抗腫瘍薬や抗菌薬, 解熱鎮痛薬などを使用している患者においてはその発症頻度が非常に高く, 代表的な薬剤性腎障害の1つとされている. |
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ISSN: | 0031-6903 1347-5231 |
DOI: | 10.1248/yakushi.128.1023 |