滲出性中耳炎を契機にメトトレキサート関連リンパ増殖性疾患と診断した上咽頭腫瘍の1例

メトトレキサート(MTX)は関節リウマチ(RA)の中心的治療薬として広く使用されているが,合併症としてリンパ増殖性疾患を誘発する場合があり,特徴として様々な部位に節外病変を認める.今回我々は滲出性中耳炎(OME)を契機にMTX関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)と診断した上咽頭腫瘍の1例を経験したので報告する.症例は70歳,女性.受診1週間前からの左耳閉感を主訴に当院を受診した.左OMEを認めたが上咽頭に腫瘍性病変は認めず,保存的加療で改善した.しかし,その5ヵ月後に左耳閉を自覚し再度受診した.左OMEが再燃し,上咽頭には隆起性病変を認めた.生検上B cellマーカー陽性の異形細胞を認め,R...

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Published in耳鼻咽喉科展望 Vol. 66; no. 2; pp. 80 - 86
Main Authors 斉藤, 優仁, 吉川, 衛, 山口, 宗太, 穐山, 直太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻咽喉科展望会 15.04.2023
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ISSN0386-9687
1883-6429
DOI10.11453/orltokyo.66.2_80

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Summary:メトトレキサート(MTX)は関節リウマチ(RA)の中心的治療薬として広く使用されているが,合併症としてリンパ増殖性疾患を誘発する場合があり,特徴として様々な部位に節外病変を認める.今回我々は滲出性中耳炎(OME)を契機にMTX関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)と診断した上咽頭腫瘍の1例を経験したので報告する.症例は70歳,女性.受診1週間前からの左耳閉感を主訴に当院を受診した.左OMEを認めたが上咽頭に腫瘍性病変は認めず,保存的加療で改善した.しかし,その5ヵ月後に左耳閉を自覚し再度受診した.左OMEが再燃し,上咽頭には隆起性病変を認めた.生検上B cellマーカー陽性の異形細胞を認め,RAに対してMTXを長年内服していることと併せてMTX-LPDと診断した.MTX内服を中止したところ,休薬6週目には上咽頭腫瘍は退縮傾向を認め,9週目には腫瘍は消失し左鼓膜所見も改善した.MTX服用中で反復するOMEを診察する際は,MTX-LPDにおける上咽頭の節外病変の可能性も念頭に置くべきであり,MTX-LPDは増大や退縮を呈する特性があることを考慮し,MTX服用中でOMEを反復する際は,一度の診察で上咽頭に異常を認めなくても上咽頭の再検査を行うことが重要と考えられた.
ISSN:0386-9687
1883-6429
DOI:10.11453/orltokyo.66.2_80