腹部大動脈瘤人工血管置換術後のS状結腸虚血性大腸炎に併発した盲腸癌の1例

症例は70歳男性で腹部大動脈瘤のため下腸間膜・右内腸骨動脈を切離するY型人工血管置換術を施行した。S状結腸の狭窄型虚血性腸炎を併発,外科紹介となった。術前CT検査で盲腸腔内に径3cmの占拠病変を認め,PET-CT検査で高SUVであった。下部内視鏡検査は施行できず,盲腸癌疑いで人工肛門造設術と,右・横行結腸動脈血流温存を考慮し,回盲部切除術を施行した。腫瘍は粘液癌であった。術2年後現在,再発はみられない。消化器外科では潜在する併発疾患を癌の術前検査で発見できることが多いが,逆に他の外科系分野では潜在消化器疾患を発見しにくい。現時点ではまれだが,今後消化器癌と大動脈瘤の併発は増加していくと考えられ...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 35; no. 6; pp. 785 - 789
Main Authors 山本, 隆嗣, 宮崎, 徹, 倉島, 夕紀子, 大畑, 和則, 大河, 昌人, 田中, 肖吾, 上西, 崇弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 2015
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Summary:症例は70歳男性で腹部大動脈瘤のため下腸間膜・右内腸骨動脈を切離するY型人工血管置換術を施行した。S状結腸の狭窄型虚血性腸炎を併発,外科紹介となった。術前CT検査で盲腸腔内に径3cmの占拠病変を認め,PET-CT検査で高SUVであった。下部内視鏡検査は施行できず,盲腸癌疑いで人工肛門造設術と,右・横行結腸動脈血流温存を考慮し,回盲部切除術を施行した。腫瘍は粘液癌であった。術2年後現在,再発はみられない。消化器外科では潜在する併発疾患を癌の術前検査で発見できることが多いが,逆に他の外科系分野では潜在消化器疾患を発見しにくい。現時点ではまれだが,今後消化器癌と大動脈瘤の併発は増加していくと考えられる。また,腹部大動脈瘤は手術後に結腸・直腸動脈の血流変化を起こしやすいので,紹介依頼時には年齢や既往から想像される潜在疾患と腹部大動脈瘤特有の病態や併発症を念頭におき術前計画を立てることが肝要と思われた。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.35.785