若年理学療法士の腰痛発生状況と労働生産性低下に対する関連要因の調査 ~アンケートによる横断的研究

【はじめに、目的】職業性腰痛は医療・社会福祉施設を含む保健衛生業で多く発生しており、労働生産性低下(プレゼンティーイズム)の主要因の1つとなっている。今日まで多くの職種に対する腰痛の調査や介入結果が報告されているが、理学療法士を対象とした報告は少なく、予防に繋がる要因についても明らかでない。本研究は理学療法士の過去の腰痛発生状況を調査し、腰痛発症とプレゼンティーイズムに関連する作業要因・環境要因について検討する事を目的とした。【方法】本研究の対象はA大学理学療法学科同窓会会員290名とし、2021年12月から2022年1月にかけて自記式アンケートフォームによるオンライン調査を実施した。腰痛有病...

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Published inJapanese Society of physical therapy for prevention (supplement) Vol. 1.Suppl.No.2; p. 123
Main Authors 久保, 一樹, 中川, 和昌, 岩﨑, 和樹, 濵田, 啓介, 須藤, 祐太, 齊藤, 竜太, 小林, 凌
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本予防理学療法学会 01.12.2022
Japanese Society of physical therapy for prevention
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ISSN2758-7983
DOI10.57304/jsptpsuppl.1.Suppl.No.2.0_123

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Summary:【はじめに、目的】職業性腰痛は医療・社会福祉施設を含む保健衛生業で多く発生しており、労働生産性低下(プレゼンティーイズム)の主要因の1つとなっている。今日まで多くの職種に対する腰痛の調査や介入結果が報告されているが、理学療法士を対象とした報告は少なく、予防に繋がる要因についても明らかでない。本研究は理学療法士の過去の腰痛発生状況を調査し、腰痛発症とプレゼンティーイズムに関連する作業要因・環境要因について検討する事を目的とした。【方法】本研究の対象はA大学理学療法学科同窓会会員290名とし、2021年12月から2022年1月にかけて自記式アンケートフォームによるオンライン調査を実施した。腰痛有病率を把握するために過去の腰痛発生の有無(過去1週間、過去1ヶ月間、入職から現在まで)を 回答項目に設定した。腰痛によるプレゼンティーイズムはWork Productivity and Activity Impairment Questionnaire(WPAI)を用い、0点(仕事への影響)~10点(完全な仕事の妨げ)の11段階で評価した。基本属性(年齢、性別、勤続年数)、過去1週間に発生した腰痛の程度(Numerical Rating Scale;NRS)、患者の起居動作、移乗動作、移動動作における1日あたりの介助業務回数(軽度介助、中等度介助、重度介助)、職場環境(臨床業務/間接業務の平均時間)、運動習慣、業務に対するストレスについても情報収集を行った。過去1週間の腰痛あり群におけるWPAIと介助業務回数、腰痛の程度との関連についてSpearmanの順位相関係数を用いて検討を行った。過去1週間の腰痛発生と基本属性、職場環境、運動習慣、業務に対するストレスとの関連についてカイ二乗検定を用いて検討した。過去1週間の腰痛あり群/群における各動作の介助業務回数についてMann-WhitneyのU検定を用いて群間比較を行った。【結果】95名からの回答が得られ(回答率:32.8%)、うち欠損のない84名(年齢:中央値27歳、四分位範囲24-29歳、性別:女性60%)のデータを解析対象とした。過去1週間、過去1ヶ月間、入職してから現在までの腰痛有病率はそれぞれ38%、42%、81%となった。過去1週間の腰痛あり群32名のWPAIは中央値2、四分位範囲1-3となり、うち26名(81%)にプレゼンティーイズムを認めた。また同群において起居動作軽度介助(r=0.354)と中等度介助(r=0.372)、移乗動作中等度介助(r=0.445)、移動動作重度介助(r=0.448)の介助業務回数とWPAIとの間に有意な相関関係を認めた。過去1週間の腰痛発生の有無とその他全項目との間に有意な関連は認められなかった。【結論】過去1ヶ月間の腰痛有病率は過去に報告された看護師(30%)や運送業(31%)の割合より高く、理学療法士への腰痛予防対策が必要である可能性が示唆された。腰痛発生の有無に関連する作業要因・環境要因の有意な傾向は見られなかったが、日常業務においてWPAI と相関関係の見られた介助業務の回数が増えるほど、腰痛を持つ理学療法士にとってはより多くの労働生産性低下を生じる可能性が示唆された。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は、ヘルシンキ宣言および人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に基づき、対象者のプライバシーおよび個人情報の保護、研究内容について十分に説明し対象者から同意を得た。また、高崎健康福祉大学倫理審査委員会から承認を得て実施した。(承認番号:2145)
ISSN:2758-7983
DOI:10.57304/jsptpsuppl.1.Suppl.No.2.0_123