人工股関節全置換術後6ヶ月の床上動作困難感の残存に影響する因子の検討

【はじめに、目的】 床や畳からの立ち上がり (床上動作)は本邦で生活に必要な動作であるが、人工股関節全置換術 (THA)後患者では禁忌肢位の影響などにより困難感を抱える患者は少なくない。床上動作中には十分な股関節や膝関節の関節可動域と膝関節伸展筋力が必要であると報告されているが、THA後患者の床上動作困難感とこれらの関連を検討した報告はない。 そこで本研究では、THA術後6ヶ月時点で床上動作困難感の残存する患者の身体機能の特徴を明らかにし、理学療法プログラム立案の一助となる知見を提供することを目的とした。 【方法】 当院にて初回THAを施行した19名 (男性3名、女性16名、年齢 60.4 ±...

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Published inJapanese Society of physical therapy for prevention (supplement) Vol. 2.Suppl.No.1; p. 115
Main Authors 緒方, 悠太, 山添, 貴弘, 久米, 慎一郎, 谷口, 侑紀, 大川, 孝浩, 竹内, 康裕, 原口, 敏昭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本予防理学療法学会 31.03.2024
Japanese Society of physical therapy for prevention
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ISSN2758-7983
DOI10.57304/jsptpsuppl.2.Suppl.No.1.0_115

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Summary:【はじめに、目的】 床や畳からの立ち上がり (床上動作)は本邦で生活に必要な動作であるが、人工股関節全置換術 (THA)後患者では禁忌肢位の影響などにより困難感を抱える患者は少なくない。床上動作中には十分な股関節や膝関節の関節可動域と膝関節伸展筋力が必要であると報告されているが、THA後患者の床上動作困難感とこれらの関連を検討した報告はない。 そこで本研究では、THA術後6ヶ月時点で床上動作困難感の残存する患者の身体機能の特徴を明らかにし、理学療法プログラム立案の一助となる知見を提供することを目的とした。 【方法】 当院にて初回THAを施行した19名 (男性3名、女性16名、年齢 60.4 ± 5.7歳、身長156.5 ± 7.5㎝、体重56.6 ± 8.8kg、術式は全例後側方侵入)とし、検討項目は術後6ヶ月の日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(JHEQ)の床上動作項目、股関節可動域、膝関節可動域、等尺性膝関節伸展筋力、等尺性股関節外転筋力とした。JHEQの床上動作項目は0から4点で回答され、3 点以上の良好群と2点以下の不良群に群分けし、身体機能の2群間の差についてウィルコクソンの順位和検定で評価した。また 2群間の反対側変形性股関節症 (股OA)の割合の差についてカイ二乗検定で評価した。 【結果】 不良群8名、良好群11名であった。不良群で術後6ヶ月の非術側股関節屈曲角度が有意に小さく (良好群:113.1 ± 9.3°、不良群:103.1 ± 8.4°)、反対側股OAを有する割合が有意に大きかった (良好群:18.2%、不良群:62.5%)。その他の項目に有意差は認められなかった。 【考察】 本研究では、床上動作不良群では術後6ヶ月における非術側の股関節屈曲角度が小さく、反対側股OAの割合が大きいことが明らかになった。当院の術式は後側方侵入であり深屈曲は脱臼のリスクがあるため、両膝立ちから非術側を前方に踏み出し立ち上がる指導を実施している。この動作では動作中に踏み出した側の股関節が約90°屈曲すると報告されており、不良群では非術側の可動域が狭く困難感が残存したと考えられる。本邦ではTHA施行時に約56%が反対側股OAを併発しているといわれている。反対側股OAがある場合には反対側の股関節屈曲可動域低下を予防することにより床上動作の困難感残存を予防できる可能性がある。 【倫理的配慮】本研究は、久留米大学倫理委員会の承認を得て実施した (研究番号22701)。また、全対象者に本研究に関する説明を行い、書面にて同意を取得した。
Bibliography:YOS-28-2
ISSN:2758-7983
DOI:10.57304/jsptpsuppl.2.Suppl.No.1.0_115