外傷性胆囊損傷の1例

症例は29歳,男性。普通自動車運転中にトラックと衝突し受傷した。右股関節脱臼骨折・臼蓋後壁骨折の診断で前医に入院加療中であったが,受傷後5日目に発熱・上腹部痛の増悪を認め,胆囊炎を疑われ当院へ搬送となった。腹部超音波検査・造影CTで胆囊の著明な腫大を認め,腹部超音波検査では胆囊壁が二層に描出され,外傷性胆囊損傷と診断し同日緊急手術を施行した。診査腹腔鏡で胆囊壁は虚血性変化を呈し,胆囊漿膜下には血腫が貯留していたため,開腹手術に移行し胆囊摘出術を施行した。胆囊は解剖学的に外力による損傷を受けにくいため,外傷による損傷が比較的まれな臓器である。早期に診断し適切な治療を行えば予後良好な疾患であるが,...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 37; no. 1; pp. 103 - 106
Main Authors 梅本, 一史, 佐藤, 暢人, 宮崎, 大, 新垣, 雅人, 福田, 直也, 飯村, 泰昭, 長谷川, 直人, 平野, 聡
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 2017
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Summary:症例は29歳,男性。普通自動車運転中にトラックと衝突し受傷した。右股関節脱臼骨折・臼蓋後壁骨折の診断で前医に入院加療中であったが,受傷後5日目に発熱・上腹部痛の増悪を認め,胆囊炎を疑われ当院へ搬送となった。腹部超音波検査・造影CTで胆囊の著明な腫大を認め,腹部超音波検査では胆囊壁が二層に描出され,外傷性胆囊損傷と診断し同日緊急手術を施行した。診査腹腔鏡で胆囊壁は虚血性変化を呈し,胆囊漿膜下には血腫が貯留していたため,開腹手術に移行し胆囊摘出術を施行した。胆囊は解剖学的に外力による損傷を受けにくいため,外傷による損傷が比較的まれな臓器である。早期に診断し適切な治療を行えば予後良好な疾患であるが,早期診断が困難な場合があり,治療の遅れにより致命的となり得る。外傷性胆囊損傷に対しては,超音波検査を中心とした可及的早期の診断と積極的な手術治療が救命に重要である。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.37.103