膝関節の腱・靭帯より摘出したコラーゲン原線維の力学的性質

本研究では,膝関節の腱・靭帯を構成するコラーゲン原線維の引張試験を行い,これらの引張特性について比較・検討した.実験には,ラットの膝蓋腱,前十字靭帯,後十字靭帯,内側側副靭帯を用いた.各腱・靭帯の線維束を蒸留水と共に試験管に入れ,試験管ミキサーで攪拌した.原線維が分離し,綿状になった試料をスライドガラス上に取り出し展開した.引張試験は倒立顕微鏡のステージ上で,暗視野下で行った.ステージ上に固定したマイクロマニピュレータに取り付けたマイクロ針を用いて,スライドガラス上に展開した試料から原線維単体を取り上げた.この原線維の他端をもう一方の針の先端に吸着させ,マニピュレータを操作して,原線維の両端を...

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Published in生体医工学 Vol. 55Annual; no. 5PM-Abstract; p. 488
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2017
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Summary:本研究では,膝関節の腱・靭帯を構成するコラーゲン原線維の引張試験を行い,これらの引張特性について比較・検討した.実験には,ラットの膝蓋腱,前十字靭帯,後十字靭帯,内側側副靭帯を用いた.各腱・靭帯の線維束を蒸留水と共に試験管に入れ,試験管ミキサーで攪拌した.原線維が分離し,綿状になった試料をスライドガラス上に取り出し展開した.引張試験は倒立顕微鏡のステージ上で,暗視野下で行った.ステージ上に固定したマイクロマニピュレータに取り付けたマイクロ針を用いて,スライドガラス上に展開した試料から原線維単体を取り上げた.この原線維の他端をもう一方の針の先端に吸着させ,マニピュレータを操作して,原線維の両端をマイクロ針に巻きつけた.次に,原線維を巻きつけた状態で生理食塩水中に浸漬した.その後,一方の針は静止させたままで,もう一方の針は原線維が破断するまでマニピュレータを用いて移動させた.試験中,原線維はマイクロ針の先端に固定されてすべりが生じることはなく,2本のマイクロ針の間で破断した.得られた応力-ひずみ関係は,すべての原線維でほぼ直線となった.各腱・靭帯の間で,引張強度,破断ひずみ,接線弾性係数に有意差は認められなかった.以上の結果から,異なる力学的性質や構造を持つ腱・靭帯においても,構成しているコラーゲン原線維の引張特性に有意差はないことが明らかになった.
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.55Annual.488