わが国における健康危機管理の実務の現状と課題:公衆衛生モニタリング・レポート委員会活動報告

目的 健康危機管理における実務活動の側面から現状と課題を明らかにし,必要な学術的検討を提言するとともに施策への反映を図る。活動方法 公衆衛生モニタリング・レポート委員会健康危機管理分野のグループ活動として,2017年度から2019年度にかけて,産学官危機管理調整システム普及サブグループにおいて,日本公衆衛生学会における実務活動に関する学術論文・発表の分析,日本公衆衛生学会総会シンポジウム活動による論点整理を実施した。活動結果 保健医療行政が行った健康危機管理の事後評価は熊本地震以降増えており,また,地域保健の現場にも健康危機管理の改善を目指す多くの芽生えといえる取り組みがあった。一方で多分野間...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 67; no. 8; pp. 493 - 500
Main Authors 古屋, 好美, 中瀨, 克己, 武村, 真治, 長谷川, 学, 冨尾, 淳, 片岡, 克己, 佐藤, 修一, 永田, 高志, 久保, 達彦, 小坂, 健, 寺谷, 俊康, 和田, 耕治, 久保, 慶祐, 神原, 咲子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 15.08.2020
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Summary:目的 健康危機管理における実務活動の側面から現状と課題を明らかにし,必要な学術的検討を提言するとともに施策への反映を図る。活動方法 公衆衛生モニタリング・レポート委員会健康危機管理分野のグループ活動として,2017年度から2019年度にかけて,産学官危機管理調整システム普及サブグループにおいて,日本公衆衛生学会における実務活動に関する学術論文・発表の分析,日本公衆衛生学会総会シンポジウム活動による論点整理を実施した。活動結果 保健医療行政が行った健康危機管理の事後評価は熊本地震以降増えており,また,地域保健の現場にも健康危機管理の改善を目指す多くの芽生えといえる取り組みがあった。一方で多分野間連携システムに関する論文は公衆衛生領域には少なかった。被災自治体は危機管理の主体であり,マネジメントの責務を負うため,平時からマネジメントや受援の準備が必要であることが示唆された。健康危機管理においてもあらゆる災害(all hazards)に対応できる体制を構築するために,危機管理の基本である情報集約・分析・判断・実行・評価のサイクルの確立(危機管理調整システム)と危機管理の実務を支える学術基盤の強化が望まれる。2019年の日本公衆衛生学会シンポジウムでは,災害時にも機能する地域包括ケアを担う人材のコンピテンシーの明確化,公衆衛生分野での災害対応人材の充実およびシステム改善の具体策として危機管理体制変更におけるキーパーソンへの働きかけが必要であると方向づけられた。産学官3分野の実践例を踏まえ,また,当モニタリンググループの学術的基盤強化サブグループによる検討とあわせて考えると,健康危機管理手法の標準化により,対応事例の検証や経験の共有が容易となり,科学的な蓄積を通じて,健康危機管理に必要な組織の強化や運用,実務の改善も共に進展する蓋然性は高い。結論 健康危機管理を実務活動面から見た結果,健康危機管理の共通基盤および公衆衛生以外の分野を含む分野横断的な連携の必要性が明確となった。健康危機管理について共通の考え方・手法を確立することにより,学術研究と実務とを両輪とした健康危機管理の発展のため,本学会内における研究へのリーダーシップを図るとともに他学会等への働きかけを日本公衆衛生学会として組織的に実施する必要がある。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.67.8_493