門脈圧亢進症治療の変遷と現況

門脈圧充進症の最も重篤な疾患である食道・胃静脈瘤の治療法について, その変遷と現在行われている各種治療法の特徴について述べた. 門脈圧元進症は基礎に肝硬変をはじめとする多くの疾患があり, 種々の程度の肝1能障害や複雑な血行動態を有することから, その治療には様々な困難が伴う. このため1877年Eckの実験的門脈下大静脈端側吻合が考案され, 1950年代前半にこれが臨床応用されて以来様々な試みがなされた. まず門脈下大静脈端側吻合についで門脈下大静脈側々吻合, 近位脾腎静脈吻合などのいわゆるmajor shuntが開発されたが, 重篤な合併症の発生によって, その後遠位脾腎静脈短絡, 左胃静脈...

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Published in順天堂医学 Vol. 45; no. 4; pp. 497 - 510
Main Authors 大橋, 薫, 児島, 邦明, 深沢, 正樹, 別府, 倫兄, 二川, 俊二, 太田, 秀二郎, 織畑, 剛太郎, 森岡, 研介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 順天堂医学会 22.03.2000
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ISSN0022-6769
2188-2134
DOI10.14789/pjmj.45.497

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Summary:門脈圧充進症の最も重篤な疾患である食道・胃静脈瘤の治療法について, その変遷と現在行われている各種治療法の特徴について述べた. 門脈圧元進症は基礎に肝硬変をはじめとする多くの疾患があり, 種々の程度の肝1能障害や複雑な血行動態を有することから, その治療には様々な困難が伴う. このため1877年Eckの実験的門脈下大静脈端側吻合が考案され, 1950年代前半にこれが臨床応用されて以来様々な試みがなされた. まず門脈下大静脈端側吻合についで門脈下大静脈側々吻合, 近位脾腎静脈吻合などのいわゆるmajor shuntが開発されたが, 重篤な合併症の発生によって, その後遠位脾腎静脈短絡, 左胃静脈下大静脈吻合などのselective shuntと, 経胸食道離断術, 胃上部切除術, Hassab手術などの直達手術へと移行した. 1970年代を中心にこれらの手術は一応納得しうる成績を挙げていたが, 外科手術は静脈瘤への効果は確実であるが, 肝硬変症が80%以上を占める門脈圧亢進症において, 侵襲の大きさが課題であり, 侵襲の少ない非観血的治療の開発が求められていた. そして1974年の経皮経肝的門脈側副血行路栓塞術 (PT0) を皮切りに, interventional radiologyとしてバルーン下逆行性経静脈的塞栓術 (B-RT0), 経頚静脈的肝内門脈静脈短絡術 (TIP) などが開発され, 一方では1978年本邦に導入された内視鏡的硬化療法 (EIS) はその低侵襲性と簡便性によって急速に普及し, さらに1992年新たに内視鏡的静脈瘤結紮術 (EVL) が開発され, 各々良好な成績が報告されている. しかし症例ごとに複雑多岐な病態を有する本症の治療に当たっては, 1種類の治療法で全ての症例を網羅することは不可能であり, 肝機能や門脈血行動態などに応じた適切な治療法を, より慎重に選択することが必要である. このためには現在行われている各種治療法や, それらの併用療法などについての利害得失を十分に理解することが肝要と考え報告した.
ISSN:0022-6769
2188-2134
DOI:10.14789/pjmj.45.497