中規模市中病院で発生した疥癬アウトブレイクへの対応

当院は250床の中規模市中病院であり,内科医ICD, ICN,細菌検査技師を中心としたICTが隔週に耐性菌の評価やラウンドを行っている.一方当院には皮膚科常勤医がいないため,疥癬や皮膚の疾患が疑われた場合には,各主治医から連携している皮膚科医に往診が依頼されることになっている.今回,我々ICTは疥癬の発生を早期に察知することができず,結果的に入院患者5名,家族,ヘルパー,当院職員および職員の同居者をふくめ36名におよぶ疥癬のアウトブレイクを経験した.感染経路の分析から,当院発症の疥癬患者→理学療法士・看護師→他の患者という経路が明らかとなった.角化型疥癬患者の隔離,職員を含む感染者全員にイベル...

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Published in日本環境感染学会誌 Vol. 24; no. 5; pp. 358 - 364
Main Authors 佐々木, 絹子, 小川, 伸, 齋藤, 紀先, 小川, 和孝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本環境感染学会 2009
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ISSN1882-532X
1883-2407
DOI10.4058/jsei.24.358

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Summary:当院は250床の中規模市中病院であり,内科医ICD, ICN,細菌検査技師を中心としたICTが隔週に耐性菌の評価やラウンドを行っている.一方当院には皮膚科常勤医がいないため,疥癬や皮膚の疾患が疑われた場合には,各主治医から連携している皮膚科医に往診が依頼されることになっている.今回,我々ICTは疥癬の発生を早期に察知することができず,結果的に入院患者5名,家族,ヘルパー,当院職員および職員の同居者をふくめ36名におよぶ疥癬のアウトブレイクを経験した.感染経路の分析から,当院発症の疥癬患者→理学療法士・看護師→他の患者という経路が明らかとなった.角化型疥癬患者の隔離,職員を含む感染者全員にイベルメクチンの投与,硫黄系沐浴剤の清拭/温浴,標準予防策の強化により,アウトブレイク認識から60日後に収束と判断した.今回の疥癬アウトブレイクの原因は,単純な診断の遅れという問題だけではなく,当院ICTの情報収集システムの脆弱さに問題があると考えられた.今後「疥癬の可能性がある」という情報が発生した場合,まだ「疑い」の段階であっても病棟師長やリンクスタッフを通じてICTに連絡するといった情報システムを整備・強化する必要性があると考えられた.とくに皮膚科常勤医がいない病院においては,ある程度疥癬の疑いが濃くなった段階でICTが介入し,主治医に早期の治療を検討してもらう必要があると考えられた.
ISSN:1882-532X
1883-2407
DOI:10.4058/jsei.24.358