避難指示が解除された地域の自治体職員を対象とした健康相談に関する活動報告

【はじめに】原子力災害からの避難指示の解除により住居可能な区域が増え,それに伴い現地での行政活動も広がっている。本学では東日本大震災による復興支援プロジェクトの活動の一つとして,2013年度から「職員の健康相談とリスクコミュニケーション事業」が行われ,職員への健康支援および放射線リスクへの住民対応支援を目的に活動してきた。その中で,身体的健康に関するニーズに応えるため,支援活動の一環で実施した体組成評価に着目し,これまでの活動報告に併せてその経時的な身体的健康の維持効果検証について報告する。【方法】対象は,2016年から2019年の期間で健康相談に参加した自治体職員202名のうち,体組成評価を...

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Published inJapanese Society of physical therapy for prevention (supplement) Vol. 1.Suppl.No.1; p. 70
Main Authors 若山, 佐一, 則包, 和也, 田中, 真, 北宮, 千秋, 高橋, 純平, 多喜代, 健吾, 工藤, 麻理奈, 山田, 基矢
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本予防理学療法学会 01.12.2022
Japanese Society of physical therapy for prevention
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ISSN2758-7983
DOI10.57304/jsptpsuppl.1.Suppl.No.1.0_70

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Summary:【はじめに】原子力災害からの避難指示の解除により住居可能な区域が増え,それに伴い現地での行政活動も広がっている。本学では東日本大震災による復興支援プロジェクトの活動の一つとして,2013年度から「職員の健康相談とリスクコミュニケーション事業」が行われ,職員への健康支援および放射線リスクへの住民対応支援を目的に活動してきた。その中で,身体的健康に関するニーズに応えるため,支援活動の一環で実施した体組成評価に着目し,これまでの活動報告に併せてその経時的な身体的健康の維持効果検証について報告する。【方法】対象は,2016年から2019年の期間で健康相談に参加した自治体職員202名のうち,体組成評価を複数回実施した32名(平均年齢45.3歳,男性18名,女性14名)を対象とした。本事業は年8回程度開催し,年間延べ約160名の方が参加する活動である。事業内容は体組成評価や血管年齢評価などの身体的評価の他,身体的症状やメンタルヘルスなど多岐にわたる相談に対応し,看護師,理学療法士,作業療法士のチームで活動している。本研究では体組成計評価結果を用いた。体組成計はMC-780(タニタ社製)を用い,評価の初回時と最終評価時のデータを採用し,比較を行った。項目は,体重,体脂肪率,筋肉量,BMI,内臓脂肪レベル,基礎代謝量とした。項目間の比較には,対応のあるt検定またはウィルコクソンの符号付き順位検定を行い,有意水準は5%とした。【結果】初回と最終評価間の日数は平均714.2±328.8日であった。体重は初回65.0±14.4kg,最終64.8±13.4kg(p=0.68),体脂肪率は初回24.6±7.5%,最終24.8±7.2%(p=0.66),筋肉量は初回46.0±9.4kg,最終45.9±9.3kg(p=0.48),BMIは初回23.9±4.5,最終23.8±4.1(p=0.56),内臓脂肪レベルは初回8.7±4.9,最終8.8±4.5(p=0.46),基礎代謝量は初回1380.5±266.4kcal,最終1373.8±261.1kcal(P=0.20)と,いずれの項目も有意差は認められなかった。【結論】体組成計評価の初回評価から約2年経過している中で有意差が認められなかったことから,身体的指標の向上はみられなかったが維持はできていたと考える。本事業では,体組成結果の説明とともに健康相談を実施している。身体的症状に関する相談内容は,日常で行う運動指導の他,健診結果,不眠など多岐にわたっており,直接的に体組成評価結果に影響を及ぼす相談は多くないものの,定期的に体組成評価を実施することで運動機会を維持しようとする職員もおり,本事業が身体的健康の維持に一定の効果をもたらしている可能性が推察された。今後は相談内容やデータの分析を進め,本事業の詳細な効果検証を進める必要がある。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には書面及び口頭にて説明を行い,同意を得た。本研究は本学倫理委員会の承認(承認番号:2018-021)を得た後に実施した。
ISSN:2758-7983
DOI:10.57304/jsptpsuppl.1.Suppl.No.1.0_70