Cell-based assay を用いた抗アクアポリン4抗体定量の試み
抗アクアポリン4抗体 (抗AQP4抗体) は,中枢神経の自己免疫性疾患である視神経脊髄炎関連疾患 (neuromyelitis optica spectrum disorders; NMOSD) の疾患特異マーカーとして2004年に発見された.我々は 2008年よりHEK293細胞を用いた抗AQP4抗体のcell-based assay(CBA) を開始し,臨床における診断ツー ルとして利用するとともに,病勢や治療効果に伴う抗体価の変化の検討を続けている. CBAはリコンビナントの抗原蛋白を培養細胞上に発現させ,それを基質として抗原抗体反応を起こさせる手法である.この方法では抗原蛋白が生体内に...
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Published in | 天理医学紀要 Vol. 20; no. 2; p. 106 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
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公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
25.12.2017
天理よろづ相談所医学研究所 |
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Summary: | 抗アクアポリン4抗体 (抗AQP4抗体) は,中枢神経の自己免疫性疾患である視神経脊髄炎関連疾患 (neuromyelitis optica spectrum disorders; NMOSD) の疾患特異マーカーとして2004年に発見された.我々は 2008年よりHEK293細胞を用いた抗AQP4抗体のcell-based assay(CBA) を開始し,臨床における診断ツー ルとして利用するとともに,病勢や治療効果に伴う抗体価の変化の検討を続けている. CBAはリコンビナントの抗原蛋白を培養細胞上に発現させ,それを基質として抗原抗体反応を起こさせる手法である.この方法では抗原蛋白が生体内に近い立体構造を有するため,ウェスタンブロットやenzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) に比べて,より高い感度・特異度が期待される.しかしながら, 一方でアッセイ毎に蛋白を発現させるため,抗原の発現量が細胞密度,viabilityや抗原蛋白遺伝子導入効率などに左右されやすい.また,抗体の結合は蛍光顕微鏡下での視認により判定するため,染色状態に影響される他,検者によるバイアスも受けやすい. 一方,2013年よりELISAによる抗AQP4抗体測定が保険収載された.ELISAでは一定量の抗原蛋白を反応用プレート内に固定して反応させるため,定量性やアッセイ毎の再現性においてはCBAよりも安定した結果が期待されるが,感度と特異度はCBAのそれを下回っている.また,抗体量が多くなると検出範囲を超えてしまい,検体を稀釈して再検するなどの処置が必要となる.現時点では,ELISA法は診断目的にのみ保険適用されており,抗体価の経時的測定は実費負担となる. 今回我々は,当院に入院した4人のNMOSD患者について,血清抗AQP4抗体の経時変化をCBAおよびELISAの両者で計測し,比較検討を行った.本研究では,個々の症例においては,CBAと ELISAによる抗体価に相関がみられた.一方,CBAにより同抗体価を示した症例間の比較では,ELISAによる抗体価に差がみられた.臨床経過と抗体価の推移の比較では,全例において発症直後の急性期治療後に血清抗AQP4抗体の低下がみられ,その後,経口プレドニゾロンとシクロスポリンによる再発予防療法により,血清抗AQP4抗体の低下が3年以上にわたり維持された. 以上の結果から, 各症例において,CBAによる抗AQP4抗体価の経時的評価の有用性が示された. |
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ISSN: | 1344-1817 2187-2244 |
DOI: | 10.12936/tenrikiyo.20-014 |