日本の地域在住高齢者におけるFRAIL scaleの質問項目の妥当性
【はじめに、目的】FRAIL scaleはフレイルの簡便な評価ツールとして開発され,疲労(Fatigue),筋力(Resistance),歩行(Ambulation),疾患(Illness),体重減少(Loss of weight)に関する5項目の質問で構成される(Morley, et al. 2012).各質問に該当する場合を1点とし,5点中3 点以上をフレイルと判定する.FRAIL scaleは,日本の地域高齢者に対する尺度の妥当性も検証されているが,原著とはカットオフ値が異なり1~2点がフレイルを識別する点数となる可能性が指摘されている(Chen, et al.2020,Kamide,...
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Published in | Japanese Society of physical therapy for prevention (supplement) Vol. 1.Suppl.No.2; p. 57 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本予防理学療法学会
01.12.2022
Japanese Society of physical therapy for prevention |
Subjects | |
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ISSN | 2758-7983 |
DOI | 10.57304/jsptpsuppl.1.Suppl.No.2.0_57 |
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Summary: | 【はじめに、目的】FRAIL scaleはフレイルの簡便な評価ツールとして開発され,疲労(Fatigue),筋力(Resistance),歩行(Ambulation),疾患(Illness),体重減少(Loss of weight)に関する5項目の質問で構成される(Morley, et al. 2012).各質問に該当する場合を1点とし,5点中3 点以上をフレイルと判定する.FRAIL scaleは,日本の地域高齢者に対する尺度の妥当性も検証されているが,原著とはカットオフ値が異なり1~2点がフレイルを識別する点数となる可能性が指摘されている(Chen, et al.2020,Kamide, et al. 2022).そこで本研究では,日本の地域高齢者におけるFRAIL scaleのカットオフ値が異なる原因を明らかにするため,尺度の各質問項目の妥当性を検証した.【方法】神奈川県内の団地に居住する65歳以上の地域在住高齢者を対象に,自記式のアンケート調査票を個別配布し,団地内に設置された回収箱に投函する方法で調査票を回収した.本研究における解析対象者は65歳以上で要介護認定がないこととした.調査項目は,FRAIL scale,基本チェックリスト(KCL),要介護認定の有無,服薬数,年齢,身長,体重とした.なお,KCLについては25項目中8 項目以上に該当した場合をフレイルとした(Satake, et al.2017).また,身長,体重からBody mass index(BMI)を算出した.統計解析として, KCLによるフレイルの有無を従属変数とし,FRAILscaleの各質問項目の該当の有無を独立変数,年齢,性別,BMI,服薬数を調整変数としたロジスティック回帰分析を行った.なお,統計学的有意水準は5%とした.【結果】要介護認定のない65歳以上の高齢者526名より有効回答を得た(平均年齢76.9±6.4歳,女性324名).KCLによるフレイルは131名(24.5%)であった.一方,FRAIL scaleが1点以上は218名(41.5%),2点以上は106名(20.2%)であった.FRAIL scaleの質問項目ごとの該当率は,疲労14.1%,筋力24.5%,歩行16.2%,疾患0.8%,体重減少15.6%で,疾患に関する該当率が顕著に低かった.各質問項目における該当の有無とKCLによるフレイルとの関連性をロジスティック回帰分析により解析した結果,疾患の質問項目だけがフレイルとの有意な関連を示さなかった.【結論】FRAIL scaleのカットオフ値が日本の地域高齢者ではオリジナル版と異なる原因として,疾患に関する質問内容が妥当ではない可能性が示された.日本の地域高齢者にFRAIL scaleを適切に使用 していくためには,疾患の質問内容の検証が必要であると考えられた.【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得て実施したものである(承認番号2021-026).また,研究対象者に対しては,アンケートへの回答と返信を持って研究参加への同意とすることを文書にて説明し,文書はアンケート用紙の配布に併せて配布した. |
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ISSN: | 2758-7983 |
DOI: | 10.57304/jsptpsuppl.1.Suppl.No.2.0_57 |