脳性麻痺患者の就学期および卒業後の身体活動量の変化とその要因―学校と通所施設の利用に着目した事例考察

【はじめに、目的】 脳性麻痺患者は就学期を過ぎると身体活動量が低下するとされており,少ない身体活動量は機能低下のリスクになると考えられる. 脳性麻痺患者について,就学期から卒業後にかけた身体活動量の縦断的変化は明らかとなっておらず,この変化に影響を与える要因も十分に検討されていない. 本報告の目的は,特別支援学校在籍時から卒業後までの身体活動量の変化とその関連要因について,学校と通所施設の利用に着目した事例考察を行うことである. 【方法および事例紹介】 脳性麻痺痙直型両麻痺と知的障害を有するGMFCSレベルⅢの 1 8歳男性.X年4月の特別支援学校高等部2年時に母親から,卒業後に利用する施設や...

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Published inThe Japanese Journal of Pediatric Physical Therapy Vol. 2; no. Supplement_1; p. 140
Main Authors 森川, 菜津, 平岡, 司, 石川, 朋裕, 知花, 朝恒, 石垣, 智也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本小児理学療法学会 31.03.2024
Japanese Society of Pediatric Physical Therapy
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ISSN2758-6456
DOI10.60187/jjppt.2.Supplement_1_140

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Summary:【はじめに、目的】 脳性麻痺患者は就学期を過ぎると身体活動量が低下するとされており,少ない身体活動量は機能低下のリスクになると考えられる. 脳性麻痺患者について,就学期から卒業後にかけた身体活動量の縦断的変化は明らかとなっておらず,この変化に影響を与える要因も十分に検討されていない. 本報告の目的は,特別支援学校在籍時から卒業後までの身体活動量の変化とその関連要因について,学校と通所施設の利用に着目した事例考察を行うことである. 【方法および事例紹介】 脳性麻痺痙直型両麻痺と知的障害を有するGMFCSレベルⅢの 1 8歳男性.X年4月の特別支援学校高等部2年時に母親から,卒業後に利用する施設や移動能力低下への不安が聞かれた. GMFMは領域D:17.9%,領域E:27.7%で上肢の支えがないと 立位保持困難であるが,機能的移動能力評価尺度(以下,FMS) は50mの移動がスコア3で,クラッチ使用で屋内移動可能. MACS(Manual Ability Classification System)レベルⅡ,CFCS (Communication Function Classification System)レベルⅢで簡単な言語的理解や表出可能,知能指数29で重度. 生活状況把握のため,理学療法評価として高校2年時に2回 (Ⅰ期:X年4~5月の学校,Ⅱ期:X年8月の放課後等デイサービス ),高校3年時に1回 (Ⅲ期:X+2年2~3月の学校),高校卒業後に1回 (Ⅳ期:X+2年6月の就労継続支援事業所)の合計4期の身体活動量を計測した. 身体活動量の測定は活動量計(Active style Pro,オムロンヘルスケア社)を用いて起床時から就寝前から装着し,10~20日間測定した.1.5METs以下は座位行動とし、身体活動は低軽強度活動 (1.6~1.9METs)、高軽強度活動 (2.0~2.9METs)、中高 強度活動 (3.0METs以上)の1日あたり時間を算出した.さらに,座位行動の中断回数の1日あたりの平均値 (回)を算出し,座位 行動時間で除すことで座位行動1時間あたりの回数へと標準化したBreak頻度を算出した。また,活動量計記録日誌を母親に渡し,一日毎に行った活動について記録した. 【結果および考察】 GMFM,FMSは学校在籍時から卒業後まで変化はみられなかった.身体活動量は,座位行動(Ⅰ期:574分・68%,Ⅱ期:522分・ 63.5%,Ⅲ期:625分・72.0%,Ⅳ期:546分・67.5%) ,軽 強度活動 (Ⅰ期:233分・27.6%,Ⅱ期:274分・33.3%,Ⅲ期:216分・24.9%,Ⅳ期:251分・31.0%),中高強度活動( Ⅰ期:37分・4.4%,Ⅱ期:26分・3.2%,Ⅲ期:27分・3.1%, Ⅳ 期:12分・1.5%),Break頻度 (回/座位行動1時間)はⅠ期: 8.92, Ⅱ期:11.24,Ⅲ期:8.69,Ⅳ期:13.45であった. 中高軽度活動は学校在籍時が最も多かったが,卒業後は軽強度活動とBreak頻度が増加していた. 【考察】 本事例は,学校卒業後の中高強度活動が減少した一方,軽強度活動とBreak頻度が学校在籍時よりも増えていた.このことが,卒業後短期間ではあるものの,活動の変化が移動能力の維持に影響した可能性があり,背景には通所施設の利用という環境要因があると考えられた.また,身体活動量計は生活全体の活動を捉える事ができ,卒業後の環境に応じた身体活動量の適正化を考察するために有用であった. 【倫理的配慮】本報告にあたり,事例の個人情報とプライバシーの保護に配慮し,保護者に充分な説明を行った後に口頭および書面で同意を得た.
ISSN:2758-6456
DOI:10.60187/jjppt.2.Supplement_1_140