NICU患児4名より検出されたメタロ-β-ラクタマーゼ産生Acinetobacter baumanniiの分子生物学的解析と環境調査

人工呼吸器により医療関連感染を起こす主要菌の一つとして知られているアシネトバクター属菌は,近年多剤耐性株が増加しつつあり,特に化学療法を施す患者や感染防御機構が整っていない未熟児に感染した場合,重篤化する危険性が高い.当院NICUにおいて患児4名よりメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)を産生するAcinetobacter baumannii(A. baumannii)が便あるいは気管チューブから検出された.医療関連感染による伝播が疑われたため,Infection Control Team(ICT)により計3回のNICU環境調査が行われたがMBL産生A. baumanniiは検出されなかった.しか...

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Published in日本環境感染学会誌 Vol. 27; no. 1; pp. 38 - 43
Main Authors 方違, 大介, 横沢, 隆行, 一ノ瀬, 直樹, 小林, 隆, 松井, 真理, 土橋, 直子, 青木, 茂行, 荒川, 宜親, 小田, 智三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本環境感染学会 2012
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ISSN1882-532X
1883-2407
DOI10.4058/jsei.27.38

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Summary:人工呼吸器により医療関連感染を起こす主要菌の一つとして知られているアシネトバクター属菌は,近年多剤耐性株が増加しつつあり,特に化学療法を施す患者や感染防御機構が整っていない未熟児に感染した場合,重篤化する危険性が高い.当院NICUにおいて患児4名よりメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)を産生するAcinetobacter baumannii(A. baumannii)が便あるいは気管チューブから検出された.医療関連感染による伝播が疑われたため,Infection Control Team(ICT)により計3回のNICU環境調査が行われたがMBL産生A. baumanniiは検出されなかった.しかし,MBL非産生A. baumanniiが水周りを中心とした環境と患児由来の人工呼吸器接続チューブから検出された.一方,気管チューブよりMBL産生A. baumanniiが分離された患児の吸引痰からはMBL非産生A. baumanniiも検出され,両検出菌のパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)による分析結果から,同一起源である可能性が強く示唆された.耐性菌による医療関連感染が疑われる際には,抗菌薬感受性試験結果が異なる場合であっても,代表的な分離株に対しPFGEを実施し,それらの遺伝的な関連性を確認して対策に生かすことが有用と考えられる.
ISSN:1882-532X
1883-2407
DOI:10.4058/jsei.27.38