跡見花蹊日記を用いた明治・大正期における東京のサクラの開花季節記録のマイニング
春の気候変動と植物季節の対応関係を長期的に評価するためには,気象庁による生物季節観測が行われていない過去におけるサクラの開花季節の記録の発掘(マイニング)は重要な課題である.本研究は,明治から大正期を対象に,教育者である跡見花蹊(あとみ かけい:天保11年 [1840年]〜大正15年・昭和元年 [1926年])の日記からサクラの開花季節の記録をマイニングし,その品質と系統的な誤差を調査した.明治6年(1873年)から大正13年(1924年)の間に,開花日を22年,満開日を33年,それぞれマイニングできた.この期間における開花日や満開日は,現在と比べて10日程度遅かった.日記の記録は,観察場所や...
Saved in:
Published in | 日本生気象学会雑誌 Vol. 59; no. 3-4; pp. 89 - 99 |
---|---|
Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本生気象学会
25.11.2022
|
Subjects | |
Online Access | Get full text |
Cover
Loading…
Summary: | 春の気候変動と植物季節の対応関係を長期的に評価するためには,気象庁による生物季節観測が行われていない過去におけるサクラの開花季節の記録の発掘(マイニング)は重要な課題である.本研究は,明治から大正期を対象に,教育者である跡見花蹊(あとみ かけい:天保11年 [1840年]〜大正15年・昭和元年 [1926年])の日記からサクラの開花季節の記録をマイニングし,その品質と系統的な誤差を調査した.明治6年(1873年)から大正13年(1924年)の間に,開花日を22年,満開日を33年,それぞれマイニングできた.この期間における開花日や満開日は,現在と比べて10日程度遅かった.日記の記録は,観察場所や観察者の違い・不連続な観察日・サクラの種や個体差を要因とした系統的な誤差を少なくとも数日程度含むと考えられる一方,植物季節に対する気候変動の影響を明らかにするための有用性が示された. |
---|---|
ISSN: | 0389-1313 1347-7617 |
DOI: | 10.11227/seikisho.59.89 |