理学療法士を対象とした転倒災害に関するアンケート調査と好事例のヒアリング調査
【はじめに、目的】厚生労働省が公表した2019年度の労働災害の職種別発生件数は保健衛生業が全体の約20%を占め13,559件であり、事故の型別でみると転倒が最も多く36%を占めている。理学療法士は約8割が医療機関で働いており、保健衛生業の転倒災害の防止に寄与できるのではないかと考えた。しかし、理学療法士による所属施設の職員に対する転倒災害の対策に関する報告は見られない。本研究は、理学療法士を対象に所属施設における転倒災害の発生状況をアンケート調査し、好事例のヒアリング調査を行った。【方法】公益社団法人日本理学療法士協会に保健衛生業の施設として登録している理学療法士の代表者15,185名へアンケ...
Saved in:
Published in | Japanese Society of physical therapy for prevention (supplement) Vol. 1.Suppl.No.1; p. 59 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本予防理学療法学会
01.12.2022
Japanese Society of physical therapy for prevention |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 2758-7983 |
DOI | 10.57304/jsptpsuppl.1.Suppl.No.1.0_59 |
Cover
Summary: | 【はじめに、目的】厚生労働省が公表した2019年度の労働災害の職種別発生件数は保健衛生業が全体の約20%を占め13,559件であり、事故の型別でみると転倒が最も多く36%を占めている。理学療法士は約8割が医療機関で働いており、保健衛生業の転倒災害の防止に寄与できるのではないかと考えた。しかし、理学療法士による所属施設の職員に対する転倒災害の対策に関する報告は見られない。本研究は、理学療法士を対象に所属施設における転倒災害の発生状況をアンケート調査し、好事例のヒアリング調査を行った。【方法】公益社団法人日本理学療法士協会に保健衛生業の施設として登録している理学療法士の代表者15,185名へアンケート調査の協力依頼を記載したメールを送付した。本研究では、アンケートの回答を得られた937名の所属施設の状況を分析した。分析項目は、職員の転倒災害の発生状況、転倒ヒヤリハット発生状況、安全衛生委員会への理学療法士の参加、転倒災害の対策状況とした。また、理学療法士による転倒災害対策の好事例施設にヒアリング調査をした。【結果】転倒災害の発生は、111施設(11.8%)で生じていた。項目別に重複回答の多い順として、転倒の発生場所は通勤を含む屋外が52件、屋内では玄関・階段が26件であり、発生時間帯は午前42件、わからない41件、午後34件であり、要因は急ぎ、小走り時の転倒49件、わからない36件、滑りやすい床など25件であった。転倒ヒヤリハット発生は、131施設(14.0%)で生じていた。重複回答の多い順として、発生場所は通勤を含む屋外が43件、屋内の廊下が43件と同数であり、時間帯は午前59件、午後49件、わからない45件であり、要因は滑りやすい床などが51件、急ぎ、小走り時の転倒44件、わからない42件であった。安全衛生委員会への理学療法士の参加は、456施設(48.7%)で「はい」と回答があった。そのうち職場の安全衛生対策に関わっている回答者は248名であり、97名が職場巡視、79名が職員の転倒災害防止対策に参加していた。好事例施設のうち健康対策室に所属されている事例では、職員の体力測定および健康増進を産業医とチームを組み、予防対策を担当されていることが分かった。【結論】理学療法士は患者の転倒対策を実施しているが、自身や周囲の医療者を勤労者と見立て、転倒災害の対象と捉える習慣がほとんど無い。厚生労働省による令和元年の労働災害発生状況で転倒災害発生率が32.2%であるのに対し本調査は11.8%と低値を示した。転倒の発生時間帯や要因の回答傾向、安全衛生委員会への参加状況などから、理学療法士が所属施設の職員の転倒災害を認知できる機会も限られている背景があると推察する。一方、職員の転倒災害の防止対策に先駆的に取り組まれている理学療法士もいることが分かった。今後、好事例の対策や取り組み過程を公開し、理学療法士による転倒災害の防止を推進したい。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は大阪急性期・総合医療センターの倫理委員会にて承認を得て実施した(番号2020-072)。対象者には、研究の説明、同意書、倫理委員会の承認などを含むアンケート調査の協力依頼についてメールを送付し、回答による同意を得たうえで実施した。 |
---|---|
ISSN: | 2758-7983 |
DOI: | 10.57304/jsptpsuppl.1.Suppl.No.1.0_59 |