心肺停止蘇生後に二期的に根治手術を施行し得た直腸癌穿孔による敗血症性ショックの1例

症例は50歳女性。下腹部痛で救急搬送され,単純CT検査中に嘔吐し心肺停止となった。ただちに心肺蘇生を開始し,8分後に自己心拍再開した。腹部CT検査で下行結腸背側に腸管外ガス像と上部直腸に辺縁不整な壁肥厚を認め,直腸癌穿孔が疑われた。敗血症よりも窒息や神経血管反射が心肺停止の要因として大きいと考え,感染悪化の予防と循環動態の安定化を図った。入院20時間後より意識状態が回復し,60時間後に開腹すると,直腸癌口側で結腸間膜に穿通していた。原発巣は切除せず,ハルトマン手術を施行した。全身状態改善後のMRI検査で肝臓,両側卵巣に造影効果のある腫瘤像を認め,直腸癌からの転移と診断され初回手術後56日目に腹...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 40; no. 3; pp. 449 - 452
Main Authors 原, 征史朗, 岸川, 圭嗣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.03.2020
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Summary:症例は50歳女性。下腹部痛で救急搬送され,単純CT検査中に嘔吐し心肺停止となった。ただちに心肺蘇生を開始し,8分後に自己心拍再開した。腹部CT検査で下行結腸背側に腸管外ガス像と上部直腸に辺縁不整な壁肥厚を認め,直腸癌穿孔が疑われた。敗血症よりも窒息や神経血管反射が心肺停止の要因として大きいと考え,感染悪化の予防と循環動態の安定化を図った。入院20時間後より意識状態が回復し,60時間後に開腹すると,直腸癌口側で結腸間膜に穿通していた。原発巣は切除せず,ハルトマン手術を施行した。全身状態改善後のMRI検査で肝臓,両側卵巣に造影効果のある腫瘤像を認め,直腸癌からの転移と診断され初回手術後56日目に腹会陰式直腸切断術+肝切除+両側卵巣摘出を施行した。心肺停止の原因が敗血症性ショックのみではない消化管穿孔に対して,早急な手術を前提としつつ,集学的治療を並行または先行させることも有用と考えられた。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.40.449