脳室周囲白質軟化症患者における計数の課題の結果と視覚的注意能力の関係

【はじめに、目的】 脳室周囲白質軟化症 (periventricular leukomalacia以下,PVL)患者は,運動麻痺以外に視知覚障害を合併することが報告されている.近年,視知覚障害の一部である視覚的注意障害の合併も疑われているが,その実態は明らかではない.本研究はPVL患者の視覚的注意能力と計数の課題の関係を検討することで,視知覚障害の一端を明らかにすることを目的とした. 【方法】 対象はPVLと診断されたPVL群14例 (年齢14.3 ± 5.5歳,BMI 17.7 ± 4.0kg/ⅿ2,粗大運動能力尺度GMFM-66 98.7 ± 50.3点) と対照群のアテトーゼ(dyski...

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Published inThe Japanese Journal of Pediatric Physical Therapy Vol. 2; no. Supplement_1; p. 31
Main Authors 野村, 龍雅, 稲葉, 智洋, 三浦, 靖史, 清水, 俊行, 代田, 琴子, 平松, 奈実, 山﨑, 美邑, 西尾, 祥子, 越智, 貴則, 大西, 巧真, 大坪, 英一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本小児理学療法学会 31.03.2024
Japanese Society of Pediatric Physical Therapy
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ISSN2758-6456
DOI10.60187/jjppt.2.Supplement_1_31

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Summary:【はじめに、目的】 脳室周囲白質軟化症 (periventricular leukomalacia以下,PVL)患者は,運動麻痺以外に視知覚障害を合併することが報告されている.近年,視知覚障害の一部である視覚的注意障害の合併も疑われているが,その実態は明らかではない.本研究はPVL患者の視覚的注意能力と計数の課題の関係を検討することで,視知覚障害の一端を明らかにすることを目的とした. 【方法】 対象はPVLと診断されたPVL群14例 (年齢14.3 ± 5.5歳,BMI 17.7 ± 4.0kg/ⅿ2,粗大運動能力尺度GMFM-66 98.7 ± 50.3点) と対照群のアテトーゼ(dyskinetic cerebral palsy 以下, DCP)群7例 (14.9 ± 2.9歳,17.8 ± 3.6 kg/ⅿ2,59.6 ± 56.2 点)で あり,両群間に有意差は認められなかった.被検者選択基準は,両眼開放下の視力がTeller acuity cardsⅡ(Stereo Optical)で0.1以上,提示した課題を理解し口頭や指差しで解答できる者とし た.計測はTobii Pro TX300 Eye Tracker (Tobii Technology) を用い,課題を画面に表示して行った.課題は同時に5つの図形が表示される視覚的注意課題である①特徴ベース注意課題 (Gakken WAVES),②オブジェクトベース注意課題(Gakken WAVES) を採用し,正答数を算出した.さらに③合同で同色な正方形を2から9まで順に増やし,それを目視で数える課題(以下,計数の課題)を実施した. 統計学的方法として,両群において対応のないt検定を実施し, PVL群においては③計数の課題と①特徴ベース注意課題,②オブジェクトベース注意課題の関係をピアソンの積率相関係数を用いた.さらに③PVL群を計数の課題で5つまでの図形しか数 えられなかったU5-PVL群と6以上数えられたO6-PVL群に分け,両サブグループにおいて①特徴ベース注意課題,②オブジェク トベース注意課題の正当数をそれぞれ比較した.有意水準は5 %とし,解析にはR version 4.3.0を使用した. 【結果】 両群の比較において,①特徴ベース注意課題 (PVL群2.4 ± 0.9点,DCP群3.0 ± 0.0点,p=0.022),②オブジェクトベース注意課題 (PVL群2.4 ± 0.6点,DCP群3.0 ± 0.0点,p=0.0057), ③計数の課題 (PVL群6.6 ± 2.6点,DCP群9.0 ± 0.0点, p=0.0058)に有意差が認められた.またPVL群において,③計数の課題と①特徴ベース注意課題 (r= 0.86, p=0.000082),②オブジェクトベース注意課題 (r= 0.81, p=0.00049)に相関関係が認められた.さらにPVL群をサブグループに分けて比較した結果,①特徴ベース注意課題 ( U5-PVL群1.4 ± 0.9点, O6-PVL群2.9 ± 0.3点, p=0.018),②オブジェクトベース注意課題 ( U5-PVL群1.8 ± 0.5点, O6-PVL群2.8 ± 0.4点, p=0.0040)に 有 意差が認められた. 【考察】 本研究結果より,PVL患者はDCP患者と比べて視覚的注意能力が低下し,画面上に表示された合同で同色の図形を区別することが困難であること,より多くの図形を数えられる者は視覚的注意課題の正当数が多いことが明らかとなった.さらに今回の視覚的注意課題は画面上に5つの図形が同時に表示される課題であり,計数の課題で5つまでの図形しか数えられなかったサブグループの方が有意に視覚的注意課題の正当数が少なかったことから,視知覚課題を行う場合は本人が数えられる図形の数よりも少ない図形で評価するのが望ましいのではないかと考えられた. 【倫理的配慮】本研究は当院倫理委員会にて承認を受けた(承認番号:1805).またヘルシンキ宣言に則り,代諾者及び被検者に研究の目的と内容,被検者の利益と不利益を説明し,自由意思により書面にて研究参加に同意を得た上で計測を行った.
ISSN:2758-6456
DOI:10.60187/jjppt.2.Supplement_1_31