腫瘍内感染から皮膚穿破をきたしたpT1a乳癌の1例

症例は96歳,女性.左乳房に10cm大の嚢胞性腫瘤を認め,精査を行ったが確定診断が得られなかった.1年8カ月後,腫瘤が自壊したため救急搬送された.腫瘤直上の皮膚に1.5cmほどの欠損を認め,膿汁の排出がみられた.38度台の発熱と頻脈を認め,腫瘤直上および周囲の皮膚は蜂窩織炎になっていた.乳癌の皮膚浸潤による皮膚穿破と腫瘍内感染を疑い,後日左乳房切除術を行った.摘出標本の病理検査の結果,嚢胞壁の一部のみに乳頭状の腫瘍を認め,わずかな間質浸潤がみられたが,皮膚穿破部には腫瘍組織を認めなかった.嚢胞壁には好中球を主体とする強い炎症細胞の浸潤を認め,急性炎症と慢性炎症が混在していたことから,穿破の原因...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 83; no. 11; pp. 1900 - 1905
Main Authors 佐賀, 信介, 大谷, 聡, 初川, 嘉経, 田中, 健太, 山村, 和生, 安藤, 修久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2022
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.83.1900

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Summary:症例は96歳,女性.左乳房に10cm大の嚢胞性腫瘤を認め,精査を行ったが確定診断が得られなかった.1年8カ月後,腫瘤が自壊したため救急搬送された.腫瘤直上の皮膚に1.5cmほどの欠損を認め,膿汁の排出がみられた.38度台の発熱と頻脈を認め,腫瘤直上および周囲の皮膚は蜂窩織炎になっていた.乳癌の皮膚浸潤による皮膚穿破と腫瘍内感染を疑い,後日左乳房切除術を行った.摘出標本の病理検査の結果,嚢胞壁の一部のみに乳頭状の腫瘍を認め,わずかな間質浸潤がみられたが,皮膚穿破部には腫瘍組織を認めなかった.嚢胞壁には好中球を主体とする強い炎症細胞の浸潤を認め,急性炎症と慢性炎症が混在していたことから,穿破の原因は腫瘤内感染と考えられた.皮膚浸潤を伴わない乳癌が皮膚に穿破することはまれであり,特に腫瘤内感染から穿破をきたした例は文献的にも他に報告はなく,貴重な症例と考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.83.1900