腹壁に発生した粘液線維肉腫の1例

粘液線維肉腫(myxofibrosarcoma:以下MFS)は軟部悪性腫瘍の一つであり,四肢に好発し,体幹部に発生するのは稀とされている.われわれは腹壁原発のMFSを経験したので報告する.症例は89歳の男性で,左鼠径部膨隆を自覚して当科を紹介受診した.造影CTにて前腹壁左腹直筋直下に約6cm大の不均一に濃染する腫瘤を認め,腹壁デスモイドと診断された.上記診断を元に局所切除の方針となり手術を行った.臍下腹直筋鞘前葉と後葉の間に弾性軟の多結節腫瘤を認めた.大部分は鈍的剥離を行えたが,恥骨骨膜との固着部は一部合併切除した.肉眼所見では粘液性成分が線維性組織によって分割されていた.病理所見にて異型度の...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 82; no. 11; pp. 2096 - 2100
Main Authors 山辻, 知樹, 石田, 尚正, 物部, 泰昌, 赤木, 晃久, 髙岡, 宗徳, 浦野, 貴至, 浦上, 淳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2021
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.82.2096

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Summary:粘液線維肉腫(myxofibrosarcoma:以下MFS)は軟部悪性腫瘍の一つであり,四肢に好発し,体幹部に発生するのは稀とされている.われわれは腹壁原発のMFSを経験したので報告する.症例は89歳の男性で,左鼠径部膨隆を自覚して当科を紹介受診した.造影CTにて前腹壁左腹直筋直下に約6cm大の不均一に濃染する腫瘤を認め,腹壁デスモイドと診断された.上記診断を元に局所切除の方針となり手術を行った.臍下腹直筋鞘前葉と後葉の間に弾性軟の多結節腫瘤を認めた.大部分は鈍的剥離を行えたが,恥骨骨膜との固着部は一部合併切除した.肉眼所見では粘液性成分が線維性組織によって分割されていた.病理所見にて異型度の強い組織球様細胞の増殖を認め,MFSおよびliposarcomaが考えられた.典型的な脂肪芽細胞の増殖は見られなかったことからMFSと診断した.術後経過は問題なく,10日目に退院した.本症例はMFSとしては稀な腹壁原発であったため,術前診断が困難であった.文献的考察を含めて報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.82.2096