空腸起始部狭窄を呈した単純性小腸潰瘍に対して腹腔鏡補助下小腸部分切除術を施行した1例

症例は68歳,男性。心窩部痛,嘔気嘔吐を主訴に受診した。CT検査で空腸起始部の狭窄に伴う腸閉塞と診断した。Long tubeを挿入し,小腸造影で空腸起始部の漏斗状狭窄を認めた。保存的治療で改善せず腹腔鏡下手術の方針とした。Treitz靭帯から約5cm遠位の空腸起始部に発赤・硬結をきたした狭窄病変を認め,空腸起始部を授動して小開腹下に小腸部分切除を行った。非ステロイド性消炎鎮痛薬の内服歴はなく非特異潰瘍に伴う全周性の狭窄を認め,病理組織学的には単純性小腸潰瘍と診断した。本症による小腸狭窄の発生部位の多くは遠位回腸であり,空腸起始部の報告は極めてまれである。後腹膜に固定されているため,同部位の切除...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 40; no. 6; pp. 771 - 775
Main Authors 藪内, 伸一, 伊豆川, 翔太, 北村, 洋, 髙橋, 道長, 深瀬, 正彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 30.09.2020
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.40.771

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Summary:症例は68歳,男性。心窩部痛,嘔気嘔吐を主訴に受診した。CT検査で空腸起始部の狭窄に伴う腸閉塞と診断した。Long tubeを挿入し,小腸造影で空腸起始部の漏斗状狭窄を認めた。保存的治療で改善せず腹腔鏡下手術の方針とした。Treitz靭帯から約5cm遠位の空腸起始部に発赤・硬結をきたした狭窄病変を認め,空腸起始部を授動して小開腹下に小腸部分切除を行った。非ステロイド性消炎鎮痛薬の内服歴はなく非特異潰瘍に伴う全周性の狭窄を認め,病理組織学的には単純性小腸潰瘍と診断した。本症による小腸狭窄の発生部位の多くは遠位回腸であり,空腸起始部の報告は極めてまれである。後腹膜に固定されているため,同部位の切除には空腸から十二指腸の授動が必要となり,術式選択は慎重に行う必要がある。Treitz近傍の上部空腸狭窄病変を腹腔鏡補助下に安全に切除し得た1例を経験したので報告する。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.40.771