乳腺診療従事者に対する労働・生活環境の実態と意識に関するアンケート調査

医師の労働環境は診療形態,診療科,性,地域別に大きく異なり,詳細なデータは少ない.日本乳癌学会は勤務状況や生活に関する包括的な実態調査を行った.会員の9%から回答を得た.男性81%,女性19%であり基本的専門分野では92%が外科であった.乳腺診療の多くは大学医局の関連病院と大学病院を中心に,大学医局の人事で派遣された指導的立場の医師を中心に行われている構図が浮かび上がった.比較的大きな総合病院がほとんどであるがその中で乳癌診療に専従している医師は1人から3人であった.週平均勤務時間は61時間以上が男性勤務医で39%,女性勤務医で44%であった.キャリア形成の障害となっているものとして約3分の1...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 73; no. 2; pp. 285 - 292
Main Authors 阿南, 敬生, 佐伯, 俊昭, 武井, 寛幸, 山本, 尚人, 井本, 滋, 堀口, 淳, 坂東, 裕子, 園尾, 博司, 池田, 正
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2012
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Summary:医師の労働環境は診療形態,診療科,性,地域別に大きく異なり,詳細なデータは少ない.日本乳癌学会は勤務状況や生活に関する包括的な実態調査を行った.会員の9%から回答を得た.男性81%,女性19%であり基本的専門分野では92%が外科であった.乳腺診療の多くは大学医局の関連病院と大学病院を中心に,大学医局の人事で派遣された指導的立場の医師を中心に行われている構図が浮かび上がった.比較的大きな総合病院がほとんどであるがその中で乳癌診療に専従している医師は1人から3人であった.週平均勤務時間は61時間以上が男性勤務医で39%,女性勤務医で44%であった.キャリア形成の障害となっているものとして約3分の1の医師が労働条件の悪さを指摘した.キャリア形成で支援が欲しいものとして6割の医師が勤務・労働条件の明確化を挙げた.多くの女性医師は結婚・出産・育児などさまざまな困難を抱えながら働いているが,同時に乳腺診療を有意義な仕事としてプライドを持って働いていることも明らかとなった.乳腺診療に従事する医師は一般勤務医と同等かそれ以上の長時間・高密度の労働をこている.労働力人口が激減した超高齢化社会でも安定した医療の提供が維持できるようにするためには,勤務医の労働環境の整備と仕組みの再構築が必要である.そして,女性医師が働きやすい環境を整備して行くことは重要と思われた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.73.285