漿膜筋層裂傷に粘膜筋層間解離が伴い粘膜が脱出したS状結腸癌の1例

過去に1例しか報告のない極めてまれな形態異常を呈した症例を経験したため報告する。症例は92歳男性。前日昼からの腹痛と嘔吐を主訴に近医を受診し,イレウスの疑いで当院救急外来を紹介受診した。腹部は膨満しており板状硬であった。腹部単純CT検査では下行結腸からS状結腸に多量の便塊が貯留しており,CT値の高い腹水を少量認めた。汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を行ったところ,S状結腸の漿膜筋層が約15cmにわたり裂け,便塊で充満した粘膜が穿孔することなく管腔構造を保ったまま脱出していた。裂傷の肛門側端に2/3周性の2型腫瘍を認め,宿便による癌部口側の内圧上昇と何らかの器質的要因により漿膜筋層裂傷が生じ,粘膜下...

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Published inNihon Fukubu Kyukyu Igakkai Zasshi (Journal of Abdominal Emergency Medicine) Vol. 38; no. 1; pp. 049 - 052
Main Authors 永田, 直幹, 坂本, 喜彦, 村山, 良太, 佐古, 達彦, 黒田, 宏昭, 橋本, 幸枝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.01.2018
Japanese Society for Abdominal Emergency Medicine
Subjects
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.38.049

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Summary:過去に1例しか報告のない極めてまれな形態異常を呈した症例を経験したため報告する。症例は92歳男性。前日昼からの腹痛と嘔吐を主訴に近医を受診し,イレウスの疑いで当院救急外来を紹介受診した。腹部は膨満しており板状硬であった。腹部単純CT検査では下行結腸からS状結腸に多量の便塊が貯留しており,CT値の高い腹水を少量認めた。汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を行ったところ,S状結腸の漿膜筋層が約15cmにわたり裂け,便塊で充満した粘膜が穿孔することなく管腔構造を保ったまま脱出していた。裂傷の肛門側端に2/3周性の2型腫瘍を認め,宿便による癌部口側の内圧上昇と何らかの器質的要因により漿膜筋層裂傷が生じ,粘膜下層の循環不全による浮腫・出血から粘膜―筋層間に解離を生じて粘膜が脱出したと推察された。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.38.049