介護老人保健施設におけるパーソン・センタード・ケアを基盤とした認知症高齢者に対する転倒予防プログラムによるケアスタッフの多職種連携の意識変化 フォーカス・グループ・インタビューを用いた分析

【目的】本研究の目的は,パーソン・センタード・ケア(PCC)を基盤とした認知症高齢者の転倒の特徴を踏まえて開発した転倒予防プログラムによるケアスタッフの多職種連携の意識変化についてフォーカス・グループ・インタビュー(FGI)を用いた分析で明らかにすることである。【方法】2016年5月~2017年1月まで100床以上の介護老人保健施設で認知症高齢者に対する転倒予防プログラ ムの「研修」を3か月間実施し,ケアスタッフは研修で学んだ知識を活用して多職種連携転倒予防チームを結成し取り組んだ。その後,同プログラムの3か月の「実践」,3か月の「フォローアップ」を実施した。認知症高齢者に対して介入を行ったケ...

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Published in日本転倒予防学会誌 Vol. 7; no. 3; pp. 39 - 47
Main Authors 内藤, 智義, 古田, 良江, 鈴木, みずえ, 松井, 陽子, 金森, 雅夫, 大鷹, 悦子, 阿部, 邦彦, 市川, 智恵子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本転倒予防学会 10.03.2021
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ISSN2188-5702
2188-5710
DOI10.11335/tentouyobou.7.3_39

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Summary:【目的】本研究の目的は,パーソン・センタード・ケア(PCC)を基盤とした認知症高齢者の転倒の特徴を踏まえて開発した転倒予防プログラムによるケアスタッフの多職種連携の意識変化についてフォーカス・グループ・インタビュー(FGI)を用いた分析で明らかにすることである。【方法】2016年5月~2017年1月まで100床以上の介護老人保健施設で認知症高齢者に対する転倒予防プログラ ムの「研修」を3か月間実施し,ケアスタッフは研修で学んだ知識を活用して多職種連携転倒予防チームを結成し取り組んだ。その後,同プログラムの3か月の「実践」,3か月の「フォローアップ」を実施した。認知症高齢者に対して介入を行ったケアスタッフ57名のうちFGIへの同意が得られたケアスタッフ6名(介護職,看護職,作業療法士,介護支援専門員)を1グループとし,「実践」後(転倒予防プログラム後)と「フォローアップ」後にFGIを実施した。インタビュー内容は,本プログラムに基づいた転倒予防ケアを実践した感想,転倒予防ケア提供における多職種連携への意見などであり,質的記述的に分析した。質的分析は,認知症看護領域の研究経験のある専門家や研究対象者に提示して助言を得て分析内容の解釈に信頼性,妥当性が得られるようにした。【結果】「実践」後のケアスタッフの意識変化は,《転倒予防ケア質指標を活用して実践すると転倒予防への意識が高 まる》《認知症高齢者の視点から行動を理解し転倒予防を考える》《多職種チームで連携した転倒予防への動機づけが高まる》《情報不足,多忙,スタッフの意識の差が転倒予防の実践を困難にする》の4カテゴリーが得られた。「フォローアップ」後のケアスタッフの意識変化は,《スタッフ間で転倒予防ケア質指標に基づいた実践が浸透するように,ルールをシンプルに整理する》《業務優先でなく,認知症高齢者の個別性に合わせたケアの転換が必要》《情報共有の場だけでなく,転倒予防対策の立案に至るカンファレンスの発展が必要》《多職種で協力した転倒予防ケアを作り出し継続したい》の4カテゴリーが得られた。【考察】PCCを基盤とした転倒予防プログラムによりケアスタッフの意識は,転倒予防に対する動機・意欲の向上,認知症高齢者の視点から転倒予防を考える,多職種連携への必要性の認識が深まるなどの変化がみられた。さらにフォローアップ後もそれらケアスタッフの意識変化は継続されたことが示された。
ISSN:2188-5702
2188-5710
DOI:10.11335/tentouyobou.7.3_39