B-9. 当センターでの急性肺血栓塞栓症患者に対する下大静脈フィルター使用の現状について

至適抗凝固療法下急性肺塞栓症患者における下大静脈フィルターの有効性に関する前向き無作為試験は現時点では存在しない. 1998年に発表された報告で中枢側深部静脈血栓症患者に対する下大静脈フィルター使用群と未使用群の比較で, 両者抗凝固療法使用下で急性期の肺塞栓症の発症を抑制したのが唯一の報告である. 一方で慢性期には下大静脈フィルター使用群では, 深部静脈血栓症の発症が明らかに増加した. 当センターでは, 右心負荷を伴う重症の肺血栓塞栓症患者等において残存する中枢側深部静脈血栓が遊離し肺塞栓を再発した場合致死的な状況に陥ると判断した場合, 一時的もしくは回収可能型下大静脈フィルターの留置を行って...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inShinzo Vol. 47; no. 7; p. 917
Main Authors 中西, 宣文, 辻, 明宏, 三田, 祥寛, 大郷, 剛, 福田, 哲也, 上田, 仁, 福井, 重文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2015
日本心臓財団・日本循環器学会
Japan Heart Foundation
Online AccessGet full text
ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.47.917

Cover

More Information
Summary:至適抗凝固療法下急性肺塞栓症患者における下大静脈フィルターの有効性に関する前向き無作為試験は現時点では存在しない. 1998年に発表された報告で中枢側深部静脈血栓症患者に対する下大静脈フィルター使用群と未使用群の比較で, 両者抗凝固療法使用下で急性期の肺塞栓症の発症を抑制したのが唯一の報告である. 一方で慢性期には下大静脈フィルター使用群では, 深部静脈血栓症の発症が明らかに増加した. 当センターでは, 右心負荷を伴う重症の肺血栓塞栓症患者等において残存する中枢側深部静脈血栓が遊離し肺塞栓を再発した場合致死的な状況に陥ると判断した場合, 一時的もしくは回収可能型下大静脈フィルターの留置を行っている. 基本的に急性期のみの使用で至適抗凝固療法が10日以上経過すれば静脈血栓症, 肺塞栓症の増悪がなければ, ほぼ全例(3カ月以内の予後患者など除き)下大静脈フィルターの抜去を試み全例抜去に成功している. 基本的に急性期に至適抗凝固療法にて血栓が安定化し増大がない限り, 残存の深部静脈血栓量が依然多い場合においても全例抜去し再発はない. また, 当センターでは全例一時留置型下大静脈フィルターと回収可能型下大静脈フィルターの合計3種類を使用しているが, 3種類とも特徴があり症例に応じて使い分けている. 下大静脈フィルター使用の問題点は, 急性期手技の合併症や永久留置としてしまう判断や手技が問題である. 急性期ほぼ安全に使用しかつほぼ確実に抜去できる判断および手技があれば, 一人でも肺塞栓症で致命的な状況を回避したいなら下大静脈フィルターの使用は必要と考える. 当センターの現在の下大静脈フィルターの使用状況および使用指針も含め報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.47.917