脳卒中の障害状態についての効用値の評価 評点尺度法と時間得失法による検討

目的 費用効用分析でその結果として用いられる効用は,一般に質を調整した生存年(quality-adjusted life years: QALYs)で表される。QALYs はある健康状態について,完全に健康な状態を 1,死亡を 0 とする尺度で効用値(utility)を数量化し,それに生存年数を乗して求められる。リハビリテーションで多く関わる脳卒中は様々な障害状態を残存させるため,その効用値は障害状態ごとに求められなければならない。今回,脳卒中の障害状態のスケールとして最も広く用いられているものの一つである Rankin scale による障害状態ごとの効用値を求め,その評価に関わる人口学的特...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 49; no. 12; pp. 1205 - 1216
Main Authors 能登, 真一, 戸村, 成男, 柳, 久子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2002
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.49.12_1205

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Summary:目的 費用効用分析でその結果として用いられる効用は,一般に質を調整した生存年(quality-adjusted life years: QALYs)で表される。QALYs はある健康状態について,完全に健康な状態を 1,死亡を 0 とする尺度で効用値(utility)を数量化し,それに生存年数を乗して求められる。リハビリテーションで多く関わる脳卒中は様々な障害状態を残存させるため,その効用値は障害状態ごとに求められなければならない。今回,脳卒中の障害状態のスケールとして最も広く用いられているものの一つである Rankin scale による障害状態ごとの効用値を求め,その評価に関わる人口学的特徴の影響や測定方法の関係の分析を目的とした。 方法 効用値の評価は,評点尺度法と時間得失法の 2 方法とし,それぞれ質問紙法にて測定した。評点尺度法は一方の端に完全に健康な状態を,もう一方の端に死を置いた線分上に複数の健康状態を位置付ける方法で,時間得失法は悪い健康状態に対して良い健康状態を得る際にどのくらいの時間をあきらめてもよいかを問う方法である。対象は,大学生,リハビリテーションスタッフ,脳卒中患者の介護者,一般企業会社員の計460人である。統計的手法はノンパラメトリック法を用いた。 成績 Rankin scale Iは評点尺度法で0.89,時間得失法で0.83,以下,Rankin scale IIはそれぞれ0.72と0.67,Rankin scale IIIは0.56と0.45,Rankin scale IVは0.36と0.24,Rankin scale V(寝たきりの状態)は0.18と0.09となった。評点尺度法と時間得失法の相関は,0.176~0.412の範囲となった。時間得失法による Rankin scale I,III~Vで集団間に差を認めたが,年齢,性別,学歴,婚姻関係,健康状態などの人口学的特徴によって効用値に有意な差を認めたものは僅かであった。 結論 脳卒中の障害状態についての効用値は,障害状態により大きく異なった。効用値の測定方法については,評点尺度法と時間得失法の相関はそれほど強いものではないことが実証された。また,健康状態の選好には人口学的特徴の影響が少ないことが明らかとなった。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.49.12_1205