ユニバーサルアドヒーシブへの光線照射の有無が自己接着性レジンセメントの歯質接着性に及ぼす影響

目的 : 汎用性に優れたユニバーサルアドヒーシブは, 自己接着性レジンセメント (自己接着セメント) の前処理材として使用可能であるが, その詳細については不明な点が多い. そこで, ユニバーサルアドヒーシブへの光線照射の有無が自己接着セメントの歯質接着性に及ぼす影響について, 剪断接着強さ試験および接着界面の走査電子顕微鏡 (SEM) 観察を行うことによって検討した.  材料と方法 : 供試したユニバーサルアドヒーシブと自己接着セメントとの組合せは, OptiBond Universal/Maxcem Elite Chroma, G-Premio Bond/G-CEM LinkAceおよびS...

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Published in日本歯科保存学雑誌 Vol. 63; no. 6; pp. 536 - 544
Main Authors 辻本, 暁正, 野尻, 貴絵, 宮崎, 真至, 奥脇, 岳人, 石井, 亮, 甘利, 佳之, 髙見澤, 俊樹, 飯島, 達也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 2020
日本歯科保存学会
Subjects
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ISSN0387-2343
2188-0808
DOI10.11471/shikahozon.63.536

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Summary:目的 : 汎用性に優れたユニバーサルアドヒーシブは, 自己接着性レジンセメント (自己接着セメント) の前処理材として使用可能であるが, その詳細については不明な点が多い. そこで, ユニバーサルアドヒーシブへの光線照射の有無が自己接着セメントの歯質接着性に及ぼす影響について, 剪断接着強さ試験および接着界面の走査電子顕微鏡 (SEM) 観察を行うことによって検討した.  材料と方法 : 供試したユニバーサルアドヒーシブと自己接着セメントとの組合せは, OptiBond Universal/Maxcem Elite Chroma, G-Premio Bond/G-CEM LinkAceおよびScotchbond Universal/RelyX Unicem 2 Automixである. 接着試片の製作に際して, ウシ下顎前歯歯冠部を用い, エナメル質あるいは象牙質平坦面を耐水性SiCペーパー#320を用いて研削し, これらを被着歯面とした. 歯面処理として, ユニバーサルアドヒーシブをセルフエッチモードとして製造者指示条件に従って塗布した後, 照射を行うもの (照射群) とこれを行わないもの (非照射群) の2条件とした. 次いで, 内径2.4mm, 高さ2mmのリング状ステンレス型にセメント泥を塡塞してこれに光照射を行い, 37°C精製水中に24時間保管した. 保管後の試片について, 万能試験機を用いてクロスヘッドスピード1.0mm/minの条件で剪断接着強さを測定し, 得られた値から各条件の接着強さ (MPa) を求めた (n=10). 得られたデータに関しては, 一元配置分散分析およびTukey HSD testによって有意水準5%の条件で統計学的検討を行った. さらに, エナメル質および象牙質との接着界面について, 通法に従ってSEM観察を行った.  結果 : 接着強さ試験の結果から, エナメル質および象牙質いずれの被着歯面においても自己接着セメントの違いによって接着強さは異なるものの, ユニバーサルアドヒーシブの塗布およびその光照射は, 接着強さの向上に寄与する傾向が認められた. また, SEM観察の結果からアドヒーシブへの照射を行った試片で, これを行わなかった試片と比較して厚いアドヒーシブ層が観察され, これが接着強さの向上に寄与した可能性が考えられた.  結論 : 自己接着セメントの前処理材としてユニバーサルアドヒーシブを用いる際には, 製品によってその傾向は異なるものの, アドヒーシブへの適切な光照射を行うことで歯質接着性の向上が期待できることが示唆された.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.63.536