リン酸系モノマー含有歯面処理剤がレジンセメントの接着性に及ぼす影響

目的 : 唾液汚染が生じた歯質表面に対し, 各種汚染除去法がレジンセメントの接着性に及ぼす影響について, 剪断接着強さおよび歯質表面の表面自由エネルギーを求めるとともにSEM観察を行うことによって検討した. 材料と方法 : レジンセメントとしてパナビアV5 (クラレノリタケデンタル) を, 唾液汚染面の表面処理剤としてカタナクリーナー (KC, クラレノリタケデンタル), Multi Etchant (ME, ヤマキン) およびUltra-Etch (UE, Ultradent Products) を使用した. 接着試験用試片の製作に際して, ウシ下顎前歯歯冠部を常温重合レジンに包埋し, エナ...

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Published in日本歯科保存学雑誌 Vol. 64; no. 3; pp. 227 - 236
Main Authors 辻本, 暁正, 宮崎, 真至, 笠原, 悠太, 北原, 信也, 石井, 亮, 廣兼, 榮造, 髙見澤, 俊樹, 吉中, 雄太
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 2021
日本歯科保存学会
Subjects
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ISSN0387-2343
2188-0808
DOI10.11471/shikahozon.64.227

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Summary:目的 : 唾液汚染が生じた歯質表面に対し, 各種汚染除去法がレジンセメントの接着性に及ぼす影響について, 剪断接着強さおよび歯質表面の表面自由エネルギーを求めるとともにSEM観察を行うことによって検討した. 材料と方法 : レジンセメントとしてパナビアV5 (クラレノリタケデンタル) を, 唾液汚染面の表面処理剤としてカタナクリーナー (KC, クラレノリタケデンタル), Multi Etchant (ME, ヤマキン) およびUltra-Etch (UE, Ultradent Products) を使用した. 接着試験用試片の製作に際して, ウシ下顎前歯歯冠部を常温重合レジンに包埋し, エナメル質あるいは象牙質平坦面を耐水性SiCペーパー#320を用いて研削して被着歯面とした. これらの被着歯面に対し, ヒト唾液を10μl滴下してこれを汚染面とした. 汚染面に表面処理を施すことなく測定を行ったものをSC群, 汚染のない被着面をControl群とした. 汚染面の表面処理法は, KC群, ME群およびUE群の合計3条件とした. これらの被着面に対して内径2.4mm, 高さ2mmの円柱状ステンレス型を静置し, これにセメントペーストを塡塞して接着試験用試片とした. これらの試片を37°C精製水中に24時間保管後, あるいは24時間保管後に5~55°Cを1サイクルとしたサーマルサイクル (TC) を10,000回負荷後, 万能試験機 (Type 5500R, Instron) を用いてクロスヘッドスピード1.0mm/minの条件で剪断接着強さを測定した. 表面自由エネルギーの算出に際しては, 剪断接着強さ測定用試片と同様に調製した試片に対して, 表面自由エネルギーが既知である3種類の液体を用いて接触角を測定することによって求めた. また, 各被着歯面における, 各処理後のSEM観察を行った. 成績 : 歯質に対するレジンセメントの24時間後の接着強さは, Control群に比較してSC群で有意に低下したが, 表面処理を行うことによって回復した. TC後におけるレジンセメントの接着強さは, エナメル質ではUE群が有意に高い値を示し, 象牙質においてはKC群が有意に高い値を示した. 歯質表面における表面自由エネルギーはSC群で低下したが, 各表面処理の影響は歯質とともに各処理剤によって異なるものであった. 結論 : 本実験の結果から, 唾液汚染されたエナメル質および象牙質に対する表面処理は, 汚染面を改質することで接着強さを向上させた. また, 処理面の表面自由エネルギーは各処理剤によって異なる傾向を示した.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.64.227