塩化ビニルモノマー曝露との関連性が疑われ肝血管肉腫との鑑別が困難であった巨大偽腺管型肝細胞癌の1切除例

症例は80歳代男性.20歳頃から15年間,溶接業に従事した.PTP誤飲で当院救急外来受診された際に腹部単純CT検査で肝S2に8 cm大の巨大腫瘍を認めた.肝血管腫と診断したが,巨大であるために厳重経過観察とした.1カ月後に施行した腹部EOB-MRI検査では,同腫瘍は9.8 cm大に増大傾向で肝内にも多発する小病変が認められ,肝血管肉腫の可能性が疑われるも肝細胞癌の可能性も十分に考えられた.診断的意義も考えて肝左葉切除術を施行した.肉眼的には腫瘍内部は凝血塊で充満し一部隔壁を伴う腫瘍で,肝血管肉腫の可能性も十分に考えられた.病理組織学的には偽腺管構造を呈する中分化型肝細胞癌と診断した.偽腺管型の...

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Published in肝臓 Vol. 64; no. 6; pp. 280 - 288
Main Authors 森, 麻奈加, 河井, 邦彦, 小森, 真人, 田中, 絵里, 横山, 茂和, 大内, 祥平, 福永, 睦, 太田, 英夫, 飯尾, 禎元
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 01.06.2023
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.64.280

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Summary:症例は80歳代男性.20歳頃から15年間,溶接業に従事した.PTP誤飲で当院救急外来受診された際に腹部単純CT検査で肝S2に8 cm大の巨大腫瘍を認めた.肝血管腫と診断したが,巨大であるために厳重経過観察とした.1カ月後に施行した腹部EOB-MRI検査では,同腫瘍は9.8 cm大に増大傾向で肝内にも多発する小病変が認められ,肝血管肉腫の可能性が疑われるも肝細胞癌の可能性も十分に考えられた.診断的意義も考えて肝左葉切除術を施行した.肉眼的には腫瘍内部は凝血塊で充満し一部隔壁を伴う腫瘍で,肝血管肉腫の可能性も十分に考えられた.病理組織学的には偽腺管構造を呈する中分化型肝細胞癌と診断した.偽腺管型の肝細胞癌は肝血管腫に非常に類似した画像所見を呈するために,特に塩化ビニルモノマー曝露歴を有する場合,肝血管腫と診断されている症例でも増大傾向を示すような症例では特に注意が必要であると思われた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.64.280