ピロリドンカルボン酸配合歯磨剤による象牙質の脱灰抑制効果・コラーゲン分解抑制効果の検討
目的 : 根面う蝕予防効果の高い歯磨剤の開発を目指し, われわれは根面う蝕の進行機序に基づいたシーズスクリーニングを行い, ピロリドンカルボン酸 (以下, PCA) に象牙質の脱灰の発生・進行を抑制する可能性を見いだした. 本研究では, PCAとフッ化物 (以下, F) を配合した新規歯磨剤の根面う蝕予防に対する有用性検証を目的に, 象牙質の脱灰抑制・コラーゲン分解抑制効果をin vitroで評価した. さらにPCAによる象牙質の脱灰・コラーゲン分解抑制効果の機序を検討した. 材料と方法 : 1. 各種歯磨剤の有用性評価 ; ウシ歯根から, 健全象牙質ブロックとコラーゲン露出象牙質ブロックを...
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Published in | 日本歯科保存学雑誌 Vol. 62; no. 6; pp. 286 - 295 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
2019
日本歯科保存学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0387-2343 2188-0808 |
DOI | 10.11471/shikahozon.62.286 |
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Summary: | 目的 : 根面う蝕予防効果の高い歯磨剤の開発を目指し, われわれは根面う蝕の進行機序に基づいたシーズスクリーニングを行い, ピロリドンカルボン酸 (以下, PCA) に象牙質の脱灰の発生・進行を抑制する可能性を見いだした. 本研究では, PCAとフッ化物 (以下, F) を配合した新規歯磨剤の根面う蝕予防に対する有用性検証を目的に, 象牙質の脱灰抑制・コラーゲン分解抑制効果をin vitroで評価した. さらにPCAによる象牙質の脱灰・コラーゲン分解抑制効果の機序を検討した. 材料と方法 : 1. 各種歯磨剤の有用性評価 ; ウシ歯根から, 健全象牙質ブロックとコラーゲン露出象牙質ブロックを調製した. 健全象牙質ブロックを歯磨剤 (1,450ppm F [TP-1450F], 3,000ppm F [TP-3000F], 1,450ppm F+PCA [TP-1450F+PCA] 配合) の希釈懸濁液で処置し, 人工唾液に浸漬した. また, コラーゲン露出象牙質ブロックを各種歯磨剤の希釈懸濁液で処置し, コラゲナーゼを含む人工唾液に浸漬した. 各象牙質ブロックを脱灰液に浸漬後, 原子吸光光度計で溶出カルシウム (以下, Ca) イオン量を定量した. さらに, 共焦点ラマン顕微鏡を用い, コラーゲン露出象牙質ブロック表層のヒドロキシプロリン (以下, HYP) 量を測定した. 2. 作用機序の評価 ; 健全・コラーゲン露出象牙質ブロックをそれぞれ, 1,450ppm F (S-1450F), 1,450ppm F+PCA (S-1450F+PCA) 水溶液の希釈液に浸漬後, 各象牙質ブロックのF滞留量をイオン電極で定量した. また, PCAをコラーゲン, コラゲナーゼと混合し, 反応後のコラーゲン分解量を測定した. さらに, 水晶振動子マイクロバランス法を用い, コラーゲンとハイドロキシアパタイト (以下, HAP) に対するPCAの初期吸着量と水洗浄後の残存量を測定し, 残存率を算出した. 結果 : 1. 健全・コラーゲン露出象牙質ブロックのいずれにおいても, 溶出Caイオン量はTP-1450F+PCA群でTP-1450F群より有意に抑制された. コラーゲン露出象牙質ブロック表層のHYP量はTP-1450F+PCA群でTP-1450F, TP-3000F群より有意に高かった. 2. 健全・コラーゲン露出象牙質ブロックのいずれにおいても, F滞留量はS-1450F+PCA群でS-1450F群より有意に高かった. PCAはコラゲナーゼによるコラーゲン分解を抑制し, HAPよりもコラーゲンに対して有意に高い残存率を示した. 結論 : In vitroにおいて, TP-1450F+PCAはTP-1450Fより健全・コラーゲン露出象牙質ブロックの脱灰を有意に抑制し, TP-1450F, TP-3000Fよりコラーゲン露出象牙質ブロックのコラーゲン分解を有意に抑制した. 本結果には, PCAの象牙質へのF滞留性の向上作用やコラゲナーゼによるコラーゲン分解抑制作用, コラーゲンへの吸着作用の関与が推察された. |
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ISSN: | 0387-2343 2188-0808 |
DOI: | 10.11471/shikahozon.62.286 |