非調和性と環境を考慮した生体分子の振動計算

「1. はじめに」 振動分光法は, 分子に光を照射したとき, 分子の振動運動に共鳴する周波数において, 光の吸収や散乱が起こることを利用し, 分子の構造や機能を調べる手法である. 特に, 振動スペクトルは水素結合などの分子間相互作用を鋭敏にプローブできるのが特徴で, 様々な生体分子の解析に用いられている. 例えば, カルボニル基が水素結合しているときとそうでないとき, C-O結合距離はほとんど変わらない(<0.02 A)が, C-O伸縮振動は50cm-1以上の有意な変化が観測される. このような特徴を活かし, アミド基に由来する振動バンドを解析することで, 蛋白質の構造変化と機能が研究さ...

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Published in生物物理 Vol. 64; no. 4; pp. 205 - 208
Main Authors 八木, 清, 杉田, 有治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2024
日本生物物理学会
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ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.64.205

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Summary:「1. はじめに」 振動分光法は, 分子に光を照射したとき, 分子の振動運動に共鳴する周波数において, 光の吸収や散乱が起こることを利用し, 分子の構造や機能を調べる手法である. 特に, 振動スペクトルは水素結合などの分子間相互作用を鋭敏にプローブできるのが特徴で, 様々な生体分子の解析に用いられている. 例えば, カルボニル基が水素結合しているときとそうでないとき, C-O結合距離はほとんど変わらない(<0.02 A)が, C-O伸縮振動は50cm-1以上の有意な変化が観測される. このような特徴を活かし, アミド基に由来する振動バンドを解析することで, 蛋白質の構造変化と機能が研究されている. しかし, 一般に生体分子の振動スペクトルは複雑で, その解釈は容易でない. そのため, 理論計算による支援が重要である. 分子振動理論の出発点は調和近似である. 調和近似は化学結合をバネに見立てる近似であり, ばね定数k(ポテンシャルの2次微分)から振動スペクトルを簡便に計算できるのが利点である.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.64.205